私は隙間が怖い。例えば冷蔵庫と壁の間、少しだけ開いたクローゼットやクーラーと天井の間、そういった「隙間の暗がり」が怖いのだ。けれど、子供の頃から怖い訳では無かった。あの出来事が起こるまでは。
あれは私が高校一年生の時に体験した出来事だ。
高校一年生の夏休み、私は特に部活には入っていなかった為暇を持て余していた。そこで、家族揃って私の母の実家に二泊三日で泊まる事になった。祖父母の家はとても壮麗なお屋敷で、すごく広かったのを記憶している。
特に何もせずのんびり過ごし、いつもより少し早い時間に就寝した。
それから数時間後に「とある音」を聞いて目が覚めた。キッチンからズズッ…ズズッ…という音がする。私は気になって、キッチンまで見に行くことにした。見に行くだけなので、電気は着けていない。長い廊下をギシギシと音を立てながらキッチンまでの距離を一歩ずつ縮める。そして音が聞こえる場所を探すと、どうやら冷蔵庫と壁の間から鳴っている様だった。何かがいる。そう直感し、冷蔵庫と壁の間の暗がりにいる何かを見ようと目を凝らした。けれど、冷蔵庫と壁の間は暗黒の闇で、何も見えずただその暗がりは無窮に続いているかの様に見えただけだった。その後すぐに音は止み、翌朝母に「昨晩冷蔵庫から音がした」と話すと、田舎だから何か大きい虫でも居たんじゃない?と受け流されてしまった。私もこの時はあまり気に留めていなかった。
この日は従姉妹と集って、色々な話をして疲れた為昨晩よりも少し早い時間に就寝した。けれど、昨晩も聞いたあのズズッ…ズズッ…という音で目が覚めた。けれど私は無視して寝ることにした。だが、音がなかなか止まない。おかしいと思い私はまたキッチンを見に行く事にした。キッチンに行くと、やはりズズッ…ズズッ…という音が聞こえる。けれど見にいくと音は止み、特に何も見当たらず翌朝を迎えた。朝、母に「ネズミか何かいるかも」と言い、冷蔵庫の隙間に何かいないか確認してもらったがそれらしき物は何も居なかった。
この日は、私の父・母・祖父母だけでスーパーに買い物へ行ってから帰る事になっており、私はその間一人で留守番する事になっていた。留守番している間しばらく本を読んでいたが飽きてきたため、祖母に食べていいと言われたお菓子を食べる為キッチンへ向かった。その時だった。冷蔵庫と壁の間から「ズズズズズズズッ」という轟音がして驚いてジュースの入ったコップを倒してしまった。またズズッ…ズズッ…という音が聞こえ、鼓動が早くなっているのを実感した。私はその隙間の暗がりを恐る恐る覗いた。…「目が合った」。その暗黒の闇に亀裂が入り、ぱちっと目が開いた。私は悲鳴をあげ尻餅をついた。そしたら、暗がりから口がかぱっと開き、「…来い。」と声を発した。
気づけば私はリビングで寝てしまっていた様で、母に起こされ目を覚ました。その後は何事も無く家に帰りました。けれど、あの暗がりの中の顔は、また私の前に現れました。冷蔵庫と壁の間、クーラーと天井の間、不自然に開いたクローゼット。何処にいても、視界に入ったその隙間の暗がりにあの顔があって「…来い。」と言ってくる。だから私は隙間が怖くて怖くて仕方がない。一日中ガムテープで隙間を塞いだ自分の部屋に籠って、布団に包まっている。けれどあいつはまた現れるだろう。私があの暗黒の闇の中に「行く」までは。
























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