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都市伝説

青空里歩さんによる都市伝説にまつわる怖い話の投稿です

「え」「あ」「い」
短編 2026/01/29 14:58 68view

真面目一筋、入社以来、無[遅刻]無欠席を誇っていたY課長が、出社時間を過ぎても、姿を表さない。

今日は、社運をかけた大事なプレゼンがある。
中でも、マーケティング部は、市場調査を元に、早急にAIを駆使した新規事業を立ち上げる必要性を、社長以下重役たちに説明しなければならなかった。

Y課長は、今回のプレゼンの総責任者である。[穴]を開けるわけには行かないことは重々わかっているはずだ。

S主任の話では、AIの実用化に向けて真剣に取り組み始めて以来、Y課長が身体の[節々]が痛む。プレゼンが済んだら病院に行きたい。と、話していたという。

ストレスで体調不良になったのか。
重篤な病でないといいのだが。

プレゼン開始まで、あと10分を切った。
会場である大会議室には、分厚い資料を前に、いかつい顔をした面々が今か今かと待ち構えている。

Y課長の遅刻について、その場にいる皆が、このままでは、プレゼンに穴を開けてしまうのではないかと危惧したその時、

ごとん
エレベーターが止まった。
タッタッタッタ
会場めがけ廊下を走る足音が響き渡る。
やっと、Y課長が到着したと思いきや、

パアーン 
けたたましい爆発音とともに大会議室のドアが吹き飛んだ。

一瞬、プレゼンを狙った企業テロリストの仕業かと、一同は、その場に戦慄したが、吹き飛ばされたドアの先には、テロリストはおろかネズミ一匹ゴキブリすらもいなかった。

「Y課長のサプライズかな。」
沈黙に耐えかねた重役のつぶやきに、場の空気が柔らいだ。
呆気にとられつつも、安堵の笑みを浮かべる社長の頭上に、粘りのある液体が滴り落ちた。

拭った手指が真っ赤に染まる。

天井を見やると、マリオネットの姿をしたY課長が、切り離された関節の一つ一つを、細く透明な蜘蛛の糸で繋がれたまま、ゆらゆらと揺れていた。

「こんなことをしたのは誰だ。」
社長の叫び声に応えるかのように、Y課長は、大きく3回口を開き、静かに目を閉じた。
「え・・・あ・・・い」

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