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妖怪・風習・伝奇

はったろさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

山の中の墓石
長編 2025/11/25 06:34 1,235view
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これは二年前、俺が中3の時に体験した恐ろしい話です。

俺が中学まで住んでいた父の実家は徳島県の田舎にあり四方を山に囲まれ地元の中学まで十数キロありました。

大きな川の支流を沿いを国道から二キロぐらい奥にさかのぼったところに父の実家はありました。家は近隣の村の中でも結構立派な作りで、お米と柚子たくさん作っていました。

そんなところに住んでいるので村には俺以外の子供がいません。それに休みの日に友達の家に行こうにも一番近い友達の家十数キロもあるのです。毎日毎日は行けません。そんな俺が毎日遊んでいたのが山でした。

我が家は村の中でも二番目に田や山林を持っており家の裏の山やそこら辺の山を遊び場として子供のころから遊んでいました。そんな場所で体験した怖い話です。

その頃の家族構成は父、祖母、俺の三人で父は役場に勤めていました。父は仕事で忙しく学校から帰っても祖母と二人っきりでした。そんなんだから俺はすごいおばあちゃんっ子になりました。

祖母はいつも優しく父に怒られた時などでも優しく慰めてくれました。しかし中学生にもなるとおばあちゃんっ子というのは恥ずかしくなってきます。どんなことにも反抗するようになり心無い言葉が口から出てしまうことも多々ありましたそんなことをしても祖母は優しく笑って許してくれました。
前置きが長くなりましたがここからが体験した話です。
中学三年生の夏。僕は突如家のことを調べることに躍起になりました。そうなった理由は家の納屋で昔の古文書を大量に見つけたからです。その古文書を見つけた僕はもともと歴史が好きなの加えうちの家にも古文書があったことの嬉しさに舞い上がったからです。

古文書を解読していくうちにご先祖様についても興味を持つようになり自分なりの家系図を作ることにしました。まずはおばあちゃんに曽祖父とその兄弟について親戚関係についてなどを聞きそれに対しておばあちゃんは優しく教えてくれました。

さらに俺は自分の村のお堂や神社地蔵などを片っ端から調べ、自分の先祖の名前が書かれていないかを探しました。その中で俺は自分の家の昔の墓(今の墓から500メートルぐらい山の上)でもう畳んでいる墓の墓石をひっくり返して名前を確認したりしてました。今思うとすごい罰当たりだなと思います。

墓石にきちんと一礼して。墓石を確認しているとものすごい人に見られている気配がするんです。ぞわぞわとした鳥肌が立ち、早く確認して帰ろうとしました。ようやく終わり山を下っていく途中ふと止まると何も音がしないことに気づきました。普段なら今の時間帯ならヒグラシが泣いているのに、と。音がしないことに恐怖を覚え素早く下山しました。素早く下山しようと思い一度だけ後ろを振り返りました。さっきまでいた昔の墓のところに数人の人影が見え、ビビりな俺の恐怖心はピークに達しました。転げるのも構わず一目散に下りました。入り口につく頃にはうるさいぐらいのひぐらしの声が聞こえていました。

先祖の事を調べ終わり
村の外れの山の中を何かないかと歩いていると、山と山の間に谷が流れているのですがそこから奥に行く人一人通れるほどの道を見つけました。この山も小さいころから何度も入った山でこんな道を見たのは初めてでした。まだ行ったことのない道に好奇心を掻き立てられ入ってしまいました。

どれくらい進んだでしょうか、10分20分それくらいだったかなと思います。人一人通れるぐらいの道がいつの間にか壁に引っ付かないと通れないような道になり下は深い谷。落ちそうになりながら先に進むとちょっとした広場があり多分田んぼ一枚分ぐらいだと思う。そこの広場の真ん中に祠がありました。

何故ここに?と思いましたが山奥に祠があるのは何度か見たことがあったためそこまで驚きはしませんでした。何年も人が来ていないらしく手入れはされていませんでした。

周りに何かないか探していると、ふと祠の奥に道があるのを見つけ、どうせここまできたんだの精神で奥まで入っていきました。これがいけなかったんだと思います。

蜘蛛の巣や倒木をくぐりながら奥に進むとさっきの祠があった広場よりも広い広場に出てました。最初は落ちないように横を流れる谷を見ていたのですが山のほうに目を向けたときに俺は絶句しました。

そこには墓石が20や30じゃなく60基ぐらい並んでおり、本当にこの時はここに来たことを後悔しました。一応墓石の名前を確認すると正右衛門、政吉など昔の名前が書かれおり、年号も読み取れる範囲で明暦2年、万治3年など江戸時代前期のものでした。墓石を見ていた俺はある一つのことに気づきました。没年が全部明暦や万治なんです。何かの間違いだと思い読めるものすべて確認しましたが全部明暦や万治でした。

何かおかしいと怖くなり、帰ろうとしたとき転んで墓石の一つを蹴飛ばしてしまいました。墓石はゴロンと転がり前に倒れました。慌てて墓石を元の場所に戻しましたがその時には先ほどまでなかった人の気配がするようになり一人や二人ではなく何十人もの気配がするようになりました。さっきまで鳴いていた鳥やセミの声も聞こえなくなり周りから『パキ…パキ…』と木の枝を踏むような音も聞こえだして一気に怖くなり、気のせいと自分に言い聞かせながらその場を離れました。

しかし壁に張り付かないと通れないような道、そんなに早く行けるわけがありません。できるだけ早く道を戻りますがやはり人の気配と『パキ…パキ…』という音はついてきました。

半泣きになりながらどうにか祠のある広場まで逃げ、息を整えながら後ろを振り返りました…自分から見て20メートルぐらい先にソレはいました。

曲がった道の先からヌッと顔を出してこちらを見ていました白い顔に目と口の位置に空いた黒い穴。それだけで恐怖するに値する姿でしたがこの続きが俺をさらに恐怖させたのです。ソレの体は人の形をしているのですが真っ白で体中にたくさんの顔が浮き出ていましたそれもすべて苦悶の表情を浮かべており目は見開きこちらを見ていました。そしてソレは俺のほうを見ると口角をあげて『アハハッ…ニンゲン…アハハッ』と笑っていました。

その言葉で恐怖が頂点に達して声にならない声を上げながら全速力で逃げました。そこからは記憶が曖昧で気づけば家の客間の布団で目が覚めました。

枕元でばあちゃんが泣いていました『無事でよかった…』と言っていました。他に回りには、ばあちゃんと父の他に近所の人、NさんとHさんOさんがいました。

いまいち状況が呑み込めていない俺にNさんが『〇〇君(俺)は〇〇(山の名前)の麓の入り口で倒れとったんじょ』と教えてくれました。代わってOさんが『あんなところでなにしよったんな?』と聞いてきました。その質問に俺は怒られないか怖かったが山の中の小道に入ったこと、祠を見つけたこと、それからさらに奥にたくさんの墓があって墓石で転んだこと、変な白い怪物に追いかけられたことなどを話しました。

祠の話まではみんな普通に聞いていましたが、お墓の話、転んだ話、追いかけられた話になると皆一様に顔が青ざめていました。全て話し終わるとこの中で最年長のHさんが『顔見たんか?』と一言。俺が頷くと。ため息をつきばあちゃんのほうを見て一言『アレを見てしもうとる、助かるか助からんかわからん』ばあちゃんが『私の命はどうなってもええけん〇〇(俺)は助けてください…』と土下座する。Hさんは決心した表情で『全力を尽くすから頭をあげえ』ばあちゃんは泣いて感謝していました。父はどこかに電話をかけていました。

それから俺は水風呂に入らされ白い服に着替えさせられて村の神社に連れていかれました。神社につくと村の男たちがみんな集まり篝火を焚いており尋常じゃない様子に怖くなりましたがそのまま本殿に通され入ると、父と祖母の他に叔母と高校の寮に行っている兄、大叔父(祖父の弟)、大叔母(祖父の妹)、大叔母(祖父の妹)が円になり座っていました。なぜいまここに?と思いましたがおとなしく円の真ん中に通され座りました。

数十分して神主さんとうちが檀家の寺の住職さん、他に3人のお坊さんが来ていました。以後神主さんをA。檀家の住職をB。三人のお坊さんをC、D、E、とします。まずAさんが僕に『今回は災難だったね』と声をかけてくれた。怖くて声が出せずにいるとCさんが『必ず助けれるとは言えないができる限りのことはする』と言ってくれました。Dさんは『絶対に何があっても声を出してはいけないよ』と言いました。そして僕に一振りの小刀を持たせてくれました。後で知りましたがそれはこの神社の御神体の一つで平家の落人の稚児が持っていたものでした。Aさんは『これが君を守ってくれる絶対に離しちゃいけないよ』と言われ持たされました。夜中の12時になりAさんは大幣を振りはじめ祝詞を唱え始めましたB、C、D、E、さんは本殿の四隅に行き念仏を唱え始めました。

いかほど時間がたったでしょうか、急に風が強くなり風に乗って『アァァ…アァァ…』とあの時の声が聞こえてきた。俺が怖さのあまり祖母のほうを見ようとするとAさんが『動いてはならん!!!!』と大喝され驚いて動きませんでした。声はどんどん近づいてきます声はどんどん鮮明になり『ァァ…オナカ…スイタ…』本当にちびりそうでした。近づくにつれてお坊さんの読経の声は大きくなりました。俺は怖くてずっと小刀を力強く持って震えていました。

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