そしてついには本殿の周りの砂利を踏む音が聞こえ、本殿の屋根の上を歩く音壁を叩く音なども聞こえてくるようになりいいよ震えが止まりませんでした。『オナカ…スイタ…』などの声が聞こえ、ついには扉の前に立ちガンガンと扉を叩きながら言うのです。『アケロアケロアケロ、クワセロクワセロ!!』と大きな声で言い続けるのです。読経の声がこれ以上ないくらい大きくなり、Aさんの祝詞と大幣も激しくなりました。Aさんが一際大きく祝詞を言い終えると清酒を僕にかけました。清酒をかけると声がぴたりと止み。それから少しして砂利を踏む音が離れていきました。
それからいかほど時間がたったでしょうか、鳥のさえずりが聞こえるようになりAさんが『もう大丈夫だよ』と言ってくれてみんなほっと息を撫でおろしました。本殿から出ると朝日が昇り時間は朝の7時でした。緊張と疲労感から眠たくなりその場で寝てしまいました。
次に目を覚ますと家の布団でした。周りを見るとAさんや他のお坊さんたち、親戚たちなどお祓いに関わった人たちがいました。Aさんが『気分大丈夫かい?』と声をかけてくれ俺は頷きました。Aさんは『そうか…ならよかったと』言ってくれました。Bさんが『あんなことになった以上君にも知る権利がある』といって昔の話を聞かせてくれました。
江戸時代の初めごろまではうちの村の支村があそこにあり十数軒が暮らしていたこと。ある年の事、例年稀に見る凶作でうちの村は何とか食いつないで行けたが、その村は耕地面積が少なくただでさえ米が獲れぬのに凶作ともなると食べるものがなくなり皆飢えていた。最初はうちの村や近隣の村に行って食料を恵んでもらっていたがそれが何度も続くとさすがにどこの村も嫌になってくる、食料を恵んでほしいと来ても食料をあげることはほとんどなくなり、支村の人々はいよいよ食べるものに困って、一つの残酷ながらも生きていく上では仕方ない選択をしたそうです。
子供や老人を間引いたのだそうです。60人いた村人のうち30人が間引かれ殺されたそうです。それからなんとか冬を越せましたが、それから残った人々はおかしくなっていったそうです。か皆やせ細ったり気が狂いだして狂い死にするものが多くなり4,5年のうちにはみんな死んでしまったと。
支村に用事のあったうちの村の猟師が村を訪ねた際に村人が全員死んでいるのを見つけ、それを可哀そうにおもったうちの村の人々が皆で墓地を作り丁重に葬りその村は廃村になったそうです。でもこの支村での出来事は、他の村の人は知らなかったらしい。支村はあくまでもうちの村扱いなのでこんな事があったと他の村に知られたくなかったらしい。
それから何年か経ち。度々あの山に入って帰ってこなくなる人が出始め、命からがら逃げてきた人の話を聞くと口をそろえて山で白い化け物に襲われたと言い大層恐れられたという。その化け物がでる場所があの廃村の墓周辺だったのでもしやと思った村の有力な家(我が家ともう二軒)が山伏を呼びあそこに祠を祀り、それより奥は禁足地となったそう。
それからその山伏はこの村に住み着きこの祠の他にも村周辺の祠を管理していたらしいがその子孫が明治期に北海道に移住してしまい誰も管理しなくなり祠や山伏が管理していた祠たちは荒れてった。ばあちゃんや村の人たちは存在は知っていたが触らぬ神に祟りなしということで実害がなかったため祠より奥は禁足地として入ってはいけないと子供に言い含めていた。
しかし40年前にも今回と同じようなことが起こったらしく、その時の当事者は俺の父とその友人3人だった。父たちは禁足地なんてどうせ嘘っぱちだろとあの奥の墓まで行ってしまったらしい。そこで父たちは墓石に罰当たりなことを相当したそうで。今回俺が体験したよりも凄い怖い体験をしたらしい。
山から逃げる途中で友人のうち1人が捕まり連れていかれ、神社で今回と同じようなお祓いをしても1人連れていかれたらしい。そんなことがあってからきちんと管理はするようになったようだが集落の人口も減り高齢化が進み管理することが難しくなっり再び管理しなくなった時に起きたのが俺の件らしい。村には俺一人しか子供がいなかったし俺自身どちらかというとインドアなので心配されていなかったらしい。
Aさんは続けて『今後何があってもあの山には入らないこと、今の状態はあくまでもアレから見えなくしただけだから、今度見つかったら助けられるかはわからない』と言われた。そしてAさんと他のお坊さんたちは一つのお守りを渡してきたCさんが『これを肌身離さず持ち歩いていれば大丈夫。私たちの力を込めているから』と。
俺がなんで親戚を集めたのかと聞くと、Aさんが『同じ血を引いている人間を集めることによってアレから見つけにくくした』とのこと。なぜ刀を持たせたのかと聞くと、Bさんが『あの刀はご神体としての力が宿っていてもしも中に入ってきてもあの刀が助けてくれるから』とのこと。C、D、Eさんは何者なのかについて聞くとAさんが『彼らは〇〇寺(四国88ヵ所の一つ)〇〇寺(四国88ヵ所の一つ)〇〇寺(四国88ヵ所の一つ)の住職さんだよ』と説明してくれました。最初は驚きましたがそんな人たちを呼ばないと危なかったのだと思いゾッとしました。
全部話し終わり最後にAさんが一つ話してくれました。アレが本殿をの周りをまわっていた時俺のご先祖様が本殿を囲むようにして並びギリギリまで守ってくれていたそう。Aさんは『最近何かお墓とか行ったかい?』と聞かれ。この前昔の墓に行っていたこととそこで体験した事を伝えた。Aさんは『ご先祖様は君がお墓に来てくれたことに喜んでいただけで、その〇〇君(俺)が見たっていう人影もご先祖様がちゃんと山を下りれるか心配でお見送りしてくれたんじゃないかな』と言っていた。その言葉を聞いてちゃんとお墓参りはしようと心に決めました。
これで話は終わりですが後日談があります。
それから半年後位にあの山はもう誰も入れないようにフェンスが山の周りを囲んで入れなくなりました。尾根伝いに行けば入れなくもありませんが行きたいとは思わないです。
このまえ数年ぶりに会ったAさんによると、一年に一回は見に行くようにしているが年々怨念が大きくなっている、アレの行動範囲が奥の禁足地だけじゃなく山全体に広がろうとしていること、いつかは村まで来るかもしれないことを話してくれた。
今は実家に帰ると必ずお墓の掃除と墓参りをするようにしてます。今でもふとあの山のほうを見ると視線を感じる時があります。
この前実家に帰って墓参りしてきたので書きました。
長文失礼しました。
























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