序章:失われた記憶の断片
僕、佐倉健人は、東京の片隅で、ごく平凡なサラリーマンとして働いていた。妻の由紀と、五歳になる娘の美緒と、幸せな家庭を築いていた。だが、時折、記憶の片隅に不気味な映像がフラッシュバックすることがあった。赤い壁の家、子どもの笑い声、そして、どこまでも続く夜の闇を走る自分。それは、遠い昔に封じ込めたはずの、故郷での夏の記憶だった。
ある晩、美緒が寝言で奇妙な歌を口ずさんだ。
「あーかい、あーかい、おうちー…」
その歌に、僕の全身は硬直した。それは、もう二度と聞くことはないと思っていた、あの歌だった。由紀は不思議そうに僕を見ていたが、僕は何も話すことができなかった。
その夜、久しぶりに幼馴染のケンジから電話があった。
「健人、例の家、また行くぞ」
ケンジの声は、どこかおかしく、まるで別人のようだった。僕が必死に問い詰めても、彼は電話を切るだけだった。
僕は、封印していた過去と向き合うことを決意した。そして、家族を連れて故郷の集落へ帰ることを決意した。しかし、それが、僕と家族を、そして故郷全体を呑み込む、巨大な呪いの渦への第一歩だとは、その時の僕は知る由もなかった。
第一部:故郷の闇と呪いの再来
第一章:再び故郷へ
故郷の集落は、昔と変わらず、山に囲まれた静かな場所だった。しかし、どこか空気が重く、湿気を帯びていた。かつて僕たちが遊んだ田んぼは荒れ果て、森はさらに鬱蒼と茂っていた。
実家に着くと、母が疲れ切った顔で迎えてくれた。
「健人、なぜこんな時に帰ってきたんだい」
母はそう言うと、僕の顔を見ようとしなかった。
その晩、僕は母から、この集落にまつわる恐ろしい歴史を聞かされた。
「あの赤い家は、元々、この集落の鎮守の森だったんだよ…」
母は、震えながら語った。
「鎮守の森だったんだよ…」
母は、震えながら語った。
昔、この集落では、不可解な出来事が続いていた。原因不明の病が流行し、人々は恐怖に怯えていた。その頃、集落の北の外れにあった古い屋敷に、何かが宿ったという噂が広まった。屋敷に近づいた者は、奇妙な歌を聞き、心を乱されると言われた。その歌は、僕が美緒の寝言で聞いた歌と同じだった。
「…そして、その歌は、聞いた者の心に深く根付き、集落全体に暗い影を落としたんだ…」
母は、そう締めくくると、もう二度と口を開かなかった。
第二章:ケンジの異変
僕はケンジに会うために、彼の家を訪ねた。
ケンジは、以前の面影はなく、痩せ細り、目には深い隈ができていた。彼の部屋には、集落の古い文献や資料が散乱していた。
「健人、来たのか…」
ケンジは、僕にそう言うと、どこか遠い目をして呟いた。
「あの家、歌が聞こえるんだ…ずっと、頭の中で響いてる…」
ケンジは、そう言うと、突然、激しく頭を抱え始めた。
























初めて長編出来た。大変なんだよ。