あれはボクがまだ幼稚園に通うか通わないかという頃の出来事。
父親が突然ボクに「自分は本当は火星人なんだ」と告白してきた。
「ええー!」当然ボクは驚いた。
まさか今まで信じていた父親が火星人だったとは・・・。
「今からその証拠を見せる」父がそう言って凄む。
いったい父は何をする気だろう・・・そう思って見ていると
「これからこのトイレに入って中で消えて見せよう」と言う。
「もういいよって言ったら扉を開けてごらん」そう言い残して父はトイレに入っていった。
トイレの扉の前で一人たたずむボク。・・・果たして・・・
「もういいよ」
父の声がしたので、おもむろに扉を開けて中に入った。
だ~~~れもいない。・・・確かにトイレは空っぽである。
トイレには扉以外の出口はないので、父は確かに消えたことになる。
不思議な現場を見てしばらく茫然としていると、玄関を開けて父が外から入ってきた。
「どうだ、これで火星人だということがわかったか」そう問いかける父。
「う・・・うん」冷や汗を感じながらうなずくボク。
「もう一回やって!!」
「いや、これは1回だけだ」
父はリクエストを断った。・・・たぶんけっこう大変な技なのだろう。
トイレには、人の頭がやっと通れるほどの小さな窓があった。
その窓の事は父には問い詰めなかった。大人が通れるとは思えないほど小さな窓である。
大の大人がそんな所から外に出て、自分が火星人である証拠だなどと言うはずがない。
だって大人だもん。
そんな火星人の父も、齢80を超え、田舎でノンビリと余生を過ごしています。
次、会いに行ったら、この件を追及してみようかと思います。
























kanaです。
「だ~~~れもいない。」のところは、稲川淳二風に読んでいただくと雰囲気出ると思います。w