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心霊

放浪者さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

お通夜の夜
長編 2025/08/27 14:48 7,096view
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梅雨も明け、これから本格的な夏が始まるというくらい雲一つないとある暑い日。祖父が亡くなった。一年ほど前から病床に臥せっていたので突然というほどの事ではないし、ある程度覚悟はしていたのだが、やはりショックだった。

 仕事を切り上げ大急ぎで祖父の家へと向かう。すでに集まっていた親戚達は葬儀場で通夜の準備を始めていた。後から合流した僕達も親戚達に混ざり、通夜の準備をしているとあっという間に夜になり続々と弔問客が葬儀場へ訪れ始めた。

 生前顔が広く人望が厚かった祖父の通夜にはかなりの数の弔問客が来ており、受付をしていた僕と従兄弟の兄、姉の三人はバタバタと忙しなく働いていた。

 (もう一人従兄弟の姉がいるのだがここでは姉Bとする)

 姉Bは結婚していて女の子四歳と下の男の子がまだ一歳だったので基本的には子供の面倒を見つつ控え室の方で弔問客などの話し相手をしていた。

 時間は午後九時を過ぎ、弔問客の姿も減ってようやく一息つけた。僕達は控え室に戻ってコーヒーを飲んでいると母が慌てた様子で声をかけて来た。

「姉Bが体調を崩して旦那さんが病院に連れて行った」

 あんなに元気だったのに突然?何があったのか詳しく話を聞くと、急に腹痛を起こしたらしいのだが、その痛がり方が尋常では無かったらしく、顔を真っ青にしてダラダラと冷や汗をかき控え室でのたうち回っていたそうだ。

 甥っ子は姉Bの旦那が一緒に病院に連れて行ったらしいが、姪っ子の事は頼むと言われたらしい。

 もう夜も更けていたので僕と兄と姉は姪っ子を連れて葬儀場から祖父の自宅へと戻った。

 それぞれ葬儀場から貰ってきた弁当を食べ、姪と姉、僕、兄の順番で風呂を済ませテレビを見ながらくつろいでいた。

 時間は午前0時を過ぎ、姪を寝かしつけたいのだが部屋から出たら入ったり、こっちを見てはニコッと笑ってまた部屋から出ていく。こっちに来いと誘っているようにも見えるその仕草に兄が姉に声をかけた。

「お前ちょっと見てこいよ。時間も時間だし早く寝かせないと明日も早いんだからさ」

 あんたが行けばいいじゃん。と言いたげな顔を見せつつも姉は立ち上がり姪の後を追いかけた。

 しばらくして姉が足早に戻ってきた。

「ねぇ!なんかあの子気持ち悪い事言ってるんだけど。ちょっと来て」

 姉に促され、僕と兄は何事だ?と一度顔を見合わせ立ち上がり姪っ子の元へと向かった。

 姪と姉が立っていたのは、亡くなった叔父の使っていた二階の部屋へと伸びる階段の前だった。

「ほら。もう一回言って?」

 姉に促され姪は階段の上を指差しながら

「ほらあそこ!階段の上からお姉さんがね。こっちおいでって手招きしてるの」

 その言葉を聞いた瞬間、全身に寒気が走った。姿は全く見えないのだが、上に行くほどに色を濃くしていく暗闇の奥に誰かいるような感じがする。

「どんな人がいるの?」

 興味本意で聞いたのだろうが姉がそう問いかけると

「髪が長くて赤い服を着ているお姉さんがこっちきて遊ぼうってずっと声かけてくるの。でも知らない人についていっちゃいけないから」

「ほら!早く寝ないからお化けが迎えに来たんだよ。このままだとお化けに攫われちゃうぞ?さぁ早く寝よう」

 兄は姪を抱き上げ、茶化すようにそう言うと部屋へと向かったが兄の顔はどこか焦っているような、怖がっている様なそんな表情を浮かべていた。

 再びリビングへと戻り、姉は姪を抱っこしたまま寝かしつけようと背中をさすりながらテレビを見ていた。僕と兄は隣接する仏間に布団を敷き寝支度を整えていると、姉の声が聞こえてきた。

「ねぇ!もう!ちょっと本当に辞めて!」

 その声を聞き急いで戻ると、姪が廊下の方へ手を振りながらキャッキャッと騒いでいた。

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コメント(1)
  • いい話、、

    2025/09/23/15:47

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