8月の半ば、俺たち4人は、岐阜県の奥地にある「神谷村」に向けて車を走らせていた。
霧島先生は今回は来なかった。体調不良とかで。
「危ないことは何もないから、資料の写真と録音だけ取ってこい。
あとは梶尾(かじお)婆さんって人を訪ねるといい」とだけ言って、後は丸投げだった。
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助手席では北野が地図アプリとにらめっこしてる。
「おかしいな、ネットだとここに村があるはずなんだけど、道が…消えてるな」
「圏外だよ。もう30分前からずっと」
後部座席の谷本が、静かに言った。
彼女は最初からずっと顔色が悪かった。
気圧のせいか、霊感のせいか、あるいは両方かもしれない。
石田はというと、やたらとテンションが高くて、窓を開けてGoProを外に向けたり、村の入り口で「YouTuberっぽいオープニング」を撮ろうとしていた。
「『きさらぎ村、実在!?』とかってサムネにしようぜ!」
「やめろや、縁起悪いわ」
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やがて車は、アスファルトから砂利道に変わり、木々の合間を抜けていくような、ほとんど獣道に近い道へ入った。
そして、ついに村の入り口に到着した。
「ようこそ――」
と書かれた木の看板の下には、もう一つ、風化した板が打ち付けられていた。
その文字はうっすらと読める。
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「神谷村 観音大祭 立入 禁止」
「昭和59年をもって本祭は終了しました」
「外来者による無断撮影・録音を禁ず」
「祭の前に見し者は、神に見られる――」
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