エイズ・メアリー

旅行が趣味の男がいた。
年齢は20代前半で、夢と希望に満ちていた。
職場での勤務態度は非常によく、1年に1度の旅行がその男の生きがいだった。

ある年、男はヨーロッパのとある国へ旅行に行った。
町並みは美しく、情熱の国だ。

男は、宿泊先のホテルに荷物を預け夜の街へ繰り出した。
ナイトクラブにて、酒を飲んでいると一人の女性と目が合った。

赤い口紅が似合う、美しい女性だった。
男と女はすぐに意気投合し、男が宿泊しているホテルへ向かい、一夜を共にした。

朝起きると、女はいなかった。
もちろん一夜だけの関係だ。
男はそう割り切り、顔でも洗おうと洗面台に向かった。

洗面台につくと、鏡一面に真っ赤な口紅でこう書いてあった。

「Ｗｅｌｃｏｍｅ　Ｔo　ＨＩＶ」

(エイズの世界へようこそ)