異常な同級生

　私の通っていた小学校では、一人異様な人がいました。（ここではTくんとします）T君は、土日、学校の無い日でもやたらと外に出ています。

　そして、近所の家にお邪魔して、ご飯までもらっているというのです。私の家にも彼が来たのですが、その時はさらに異様でした。

　私が外出しており、母親が対応していました。T君は私の家に入りたかったそうですが、その要求を割と乱暴に「子供は外で遊んでいろ」と言い突っぱねてしまいました。

　母親がキッチンに戻って洗い物などを済ませた後、私の布団を干そうとして、私の寝室に入りました。私の布団がありましたが、中がとても膨らんでいました。

　おそるおそる布団をはがすと、T君が中でうずくまっていたそうなのです。母親は恐怖を抑えながら起こります。

　「あんた、何してるの！人様の家に勝手に入って布団に入るなんてどういうことなの！！」母親得意のヒステリーでぎゃんぎゃんと怒りましたが、彼は立ち上がり、にたにたと歯を見せながらゆっくりと口角を上げています。何もしやべりません。

　私の母親はT君の母親に怒られたり面倒なことに巻き込まれるの覚悟で無理やり彼を外に出し、鍵をしっかりと閉めました。しばらくしてドアスコープを覗いてもまだにたにた笑う彼がいたようです。

　さて、彼の異様さをご理解いただけたかと思いますが、正直こんなものではありません。次は私が直接体験した話になるのですが、ある日、女友達とT君とたまたま帰ることになりました。

　女友達もまだ小学生ですから、そこらへんに咲いていた雑草の黄色い花に心を奪われてしゃがんでいました。私もきれいだなあ、なんて思いながらその光景を眺めています。

　その時、私はたまたまＴ君が目に入りました。しゃがんで花をいじっている女友達を頭上からのぞき込んでいます。また変なことしてるなあ、と思いながらもちょっと怖くて目が離せません。

　Ｔ君の口から、透明な何かが垂れてきました。よだれです。それが、糸を張ってゆっくりと女友達の頭上に落ちていきます。何が起こっているかわからなかった私は無我夢中でＴ君を突き飛ばしました。

　Ｔ君は突き飛ばせたものの、よだれはその衝撃で女友達の頭上にかかってしまいました。女友達は悲鳴を上げながら逃げていきます。

　突き飛ばされて手をついた彼はまた口角を上げてにやりと笑いました。次の瞬間、５０ｍ走でいっつもビリなはずのＴ君がものすごい速度で私の家に向けて走っていきます。

　私もあまり速いとは言えませんでしたが、全速力で追いかけても全く差が埋まりません。ついには、私の家の扉を開けていました。何とか数秒後に追いつくと、彼は「○○（私の名前）ママ、手のひら見て」といい、手のひらを見せました。

　「○○に飛ばされて、ケガしちゃった。」そういいながら見せるのですが…
　「ケガなんてどこもしてないじゃない。でも○○、あんた、なんで突き飛ばしたん？」

と言われて、今までの顛末を話します。母親の顔色が青ざめながらも𠮟りつけます。この時も、彼はただただ笑っています。

　説教が終わった、その瞬間でした。彼はまた凄まじい速度で靴を脱ぎ、私の部屋に入っていったのです。そして布団をかぶっています。布団をはがそうとする母親、笑いながら抵抗するＴ君。私はただ黙ってその様子を部屋の外で眺めることしかできませんでした。

　またさらに説教されるＴ君ですが、にたにたと笑い、直立不動でやはり親から追い出されます。私ももう外で遊ぶ気力すらなく、その日はリビングで寝ました。後日分かったのですが、Ｔ君はその女友達のことが好きで、衝動が抑えられなかったとのことでした。

　これが彼の中でとても気持ち悪かったエピソードです。一応、それ以外にも母親と一緒に登校したりとか、私の友人の一人に執着して付きまとったとか、あまりにも私を侮辱したり付きまとったりするので言い返したところ思いっきり大泣きしたりとか、他にも色々ありました。

　中学校以降、彼は誰も知らないところとなりました。誰も彼に興味を持たず、友達もいなかったのです。

　ここから先は少しおまけの話になります。実は、母親がインターネット上で１年前、彼と思しき人物を見かけたというのです。私と同年代のため、去年となるともうすでに２０歳になっていると思われます。

　私の母親はゲームの配信を視聴しており、彼と全く同姓同名のアカウントが配信者に対して複数コメントしていたというのです。同姓同名だけならたくさんいると思うのですが、Ｔ君の下の名前はいわゆるキラキラネームであり、あまり見たことのない当て字が使われていたそうで、全くそこすら同じだったらしいです。

　彼のコメントはどれも指示厨のようでありながら、どこかずれている印象を受けた、とのことでした。配信者は人数も少なく和気あいあいとしている配信だったからかキックすることもなくなんとなく回答していたそうです。

　以上がＴ君の話になります。