【実話】幽体離脱ごっこ

5年くらい前なんだけどさ、実家に帰ったときに昼寝してて、ふと目が覚めたんよ。
んでまた「もうちょい寝よっかな〜」って目を閉じた瞬間、金縛り。
まあ、俺にとっちゃ珍しくもなくてさ。昔から車の中だろうが、畳の上だろうが、よくなる体質なんだよ。

でもその日はちょっと違ってて、部屋には俺一人のはずなのに、10人くらいの話し声が聞こえてくるわ、どこの国の言葉かわからない歌が流れてくるわで、ちょっとビビった。

で、ふと思い出したんだよ。
『一日外出録ハンチョウ』で見た「金縛りから幽体離脱する男」の話。

金縛り→幻聴・幻覚→起き上がるイメージ→幽体離脱（明晰夢）ってやつ。

「あれ、俺もできるんじゃね？」って。
試してみたの。体動かないけど、思いっきり起き上がるイメージだけ強く持ってさ。

そしたらスッと、リクライニングベッドみたいに体が起き上がってく感覚になって。

中腰くらいの高さになった瞬間、ポンッて、体から抜けた感じがした。

そっから先は、もう夢っていうより現実だった。
視界がやたらクリアで、障子も畳も、掛け軸の柄すらもハッキリ見える。
んで玄関行こうとしたら、親父とすれ違った。でも俺のこと、見えてないっぽい。
声かけたけどスルーされた。

で、玄関の扉を開けたんだ。
そしたら見たこともないくらい澄み切った青空が広がってた。

うちの前って公園なんだけどさ。
右が遊具、左が運動場。そこに白Tと青ジーンズの人たちが5人くらい遊んでてさ。
手を振ってきたんだよ、みんな笑顔で。

なぜかわからないけど、めちゃくちゃ幸せな気持ちになってて、
「このままずっとここにいたいなぁ」なんて思ってた。

けど、公園の先の柵を越えたところで違和感があった。
景色が、ぼやけてんだよ。
ドットが荒いネットの画像みたいに。
なんか「ここから先、行ったら戻れないぞ」って空気があってさ。
怖くなって目つぶって、体の力抜いたら、グワンッて吸い戻される感じで布団に戻ってきた。

でさ、もう1回寝ようとしたらまた金縛り。
あ、いける！と思ってまた飛び出したんだけど……
今度は違った。