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不思議体験

柴犬さんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

行方不明の妹の話
短編 2025/06/18 15:29 2,688view
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深夜にバイトから帰ってきてシャワーを浴びた後、髪が乾くまでリビングのテレビで何か観ようかなと思った。動画を観るつもりだったが、電源を入れて最初に映ったテレビ放送の内容に惹かれてしまい、そのまま観ることにした。

通学途中に行方不明になった女子小学生が、10年後にニートの家で監禁されているところを警察に保護された、という事件特番の再放送だった。

こういう行方不明者が生きて見つかる事あるんだ、と驚いた。なんとなく、行方不明者って異世界とか、現実ではないどこかに行っているような気がしていた。
この事件の被害者は、毎日男にスタンガンで脅されながらも、生きるために行動し続けていたそうだ。

俺には妹がいた。妹は俺が小学校に入学する年に生まれた。両親から、もうすぐ妹ができると聞かされた時、特になんの感情も湧かなかった気がする。小学校に入学することの方がずっと楽しみだった。
妹が生まれてからも、専ら俺は外で遊んでいたし、家にいる赤ん坊にはあまり関心がなかった。
妹が保育園に入ったあたりから、親に面倒を言い付けられることはあった。
多かったのは妹の保育園の迎え。俺も通っていた保育園だったので、当時俺の担任だった先生からよく話しかけられていた。
大雨の後、路面がすごく悪い日に迎えに行かされたことがあった。俺は深さのある水溜りの間を縫って歩いたが、妹はいちいち水溜りを選んで歩き、長靴を踏み鳴らしていた。

俺の数歩前で次の水溜りにむかって足を伸ばした妹の姿が、突然消えた。
驚いてよく見ると、妹は大きな水溜まりの中に腰まで水没し動けなくなくなっていた。
引っ張り上げてから、水溜りってこんな深いことあるっけ?と思い自分のスニーカーの先をつけてみたら2cmで底についた。
妹はずぶ濡れだったので、帰宅してすぐ着替えることを薦めた。妹は、自分で出してきた新しい服に着替え、着ていたものは脱ぎ捨てていた。俺は気が回らなかったのだが、足が泥だらけで、妹が歩き回ったところにくっきり足跡が残っていた。
親が帰ってきて、家中の足跡に驚いて俺達に事情を聞いてきた。俺達は水溜まりに沈んだ、と伝えたが、多分転んだか何かだと思ったようで怪我の心配をしただけだった。

妹は、子ども2人で留守番している時に、〇〇(人名)がくるよ、とか、⬜︎⬜︎になるよ、と予言めいたことを言い出すことがあった。だいたい当たってた。
家族で神社に行った時、1秒前まですぐ後ろにいたはずの妹が、前方の本殿の方から駆け寄ってきたことがある。親は俺の方がふらっといなくなる(多動気味だった)ので、こちらにばかり睨みを利かせて、聞き分けの良い妹が数メートル瞬間移動しても気づかないようだった。

不思議エピソードに事欠かない妹だったが、保育園でも小学校に入ってからも、外では妙なことは言わずに過ごしていたらしい。
俺の方では、妹とはこんなものかと思っていたし、俺達は普通の家族だった。

思い返すとあれが何かのきっかけだったのかなと思うことがある。
留守番中、俺がリビングでSwitchをしていると妹が、お願いがある、と声をかけてきた。
水の入ったコップを差し出し、これ持ってついてきて、という。
なんだか知らないが、とりあえず妹のいう通り水を持って2階の子ども部屋に上がった。
妹の手が届かない棚の中に水を置けという。なんで?と聞いたが、お願い、としか応えない。俺が言われた通りにすると、妹は満足そうに笑い、親の部屋まで走って行って、親のベッドでそのまま寝た。

その日から夜に気配を感じるようになった。
寝る時、ベッドの横に(子どもからすると)驚く程大柄の大人が立ってこちら見ているのだ。何をしてくる訳でもないが、存在感と威圧感がすごかった。
ほぼ毎晩、俺はそれを無視して布団の中で丸まって寝るようになった。

最後の日も、妹は奇妙だった。普段なら俺より3時間早く寝る妹が、深夜俺のところに来た。
眠ろうとしていた俺の耳元で何かごにょごにょ言っていた。

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コメント(4)
  • あんのうりんせい

    2025/06/19/11:01
  • どういうことですか

    2025/06/25/15:13
  • すみません、理解ができなく、気になるので解説を求

    2025/06/25/15:14
  • コメントありがとうございます。

    何通りか読み方ができる、怖くないけど不思議な雰囲気の話しを書きたいと思い投稿してみましたが、説明不足過ぎたのでいずれ加筆して長編にしたいと思います。。

    読み方.1
    妹がおかしいのではなく全てADHDの「俺」の認識違いと妄想です。妄想が一線を超えて妹が怖くなり、あの日の夜、妹を山に連れ出し妹の足では絶対に生きて帰れない崖下に彼女を放置しました。だから生きて帰ってくるなんてあり得ないのです。
    遺伝子異常がある家系で一族の男性のみ心臓突然死で早生している事が恐怖と妄想に拍車をかけました。(こういう遺伝子異常は実際にあります)

    2.「俺」は神を宿す血筋で妹は神の子です。
    神の子の男兄弟は従者として仕える定めがあります。妹は段階を踏んだ儀式を行い本来の力を取り戻そうとしています。
    最後の日、妹は兄を贄として差し出して神に戻るつもりでした。本来彼は妹からのお願いを断る事ができません。洗脳されたように全ての願いを叶えて命を差し出す係です。
    彼は深夜に妹に言われるまま山に行き、神の子の半身を取り戻す儀式を行い死ぬはずでした。しかし最後の瞬間に彼は自我を取り戻し、妹を殺して儀式を失敗させました。
    神の子に正しく仕えなかった男性および神の子が生まれなかった代の男性は40歳で神に喰われ、次の神の子の血肉となります。

    3.
    妹は存在しません。本来の妹は妊娠後期、生まれる前に亡くなっています。
    妹ができる、という親からの言葉以外、誰も妹の存在を直接言及していません。
    兄はその事実を塗り消し、イマジナリーフレンドの妹を生み出しました。存在しない妹を保育園に迎えに行き、雨の日に自分が転んで足が汚れれば、妹が水溜まりにはまったと思い込みます。
    イマジナリーフレンドである妹は、「俺」の成長に伴い姿を消しました。

    2025/06/30/20:48

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