向かい合わせの怪異
投稿者:r.s (1)
先日、自宅付近の路地を歩いていると、一軒のカフェを見つけた。
入口には古びた木製の扉があるだけで店内を伺うことはできないが、扉には「営業中」と書かれたプレートに簡素なメニュー表が掛かっている。
わたしは先月に引っ越したばかりなので、時おり自宅近辺を散策しては、こうして気になる店へ入ってみるのだ。
店内はアンティークな落ち着いた雰囲気で、店主と思しきお爺さんが「いらっしゃい」と迎えてくれる。
他にお客さんも見当たらなかったので、奥にある二人掛けの席へ座ってから注文を済ませると、わたしは書きかけの原稿をテーブルに広げた。
原稿といっても、別に物書きとして生計を立てている訳ではない。
単なる趣味として、日々の出来事や思いついたネタを物語風に書き留めているだけだ。
いっときは携帯電話やパソコンに打ち込んでいたこともあったが、最終的には紙とペンに落ち着いた。
そうして、時々それをブログに掲載してみたりなんかもする。
注文したコーヒーを啜りながら筆を走らせていると、ハットを被った1人の男性客が入ってきた。
年齢は60代前後だろうか。
店主と親しげに会話をしている様子から、知人か常連客のように見受けられる。
その男性は私の姿に気がついて「作家さんかい」と尋ねてきた。
わたしは「そんな立派な者じゃないです」と言って視線を机の上に落としたが、「向かいに座ってもいいかな」と被っていたハットを取って近づいてくる。
少しためらったが、もしかしたら面白い話が聞けるかもしれないと思い承諾することにした。
男性は頻繁にここへ足を運んでおり、かれこれ20年ほど通っているそうだ。
それでも、場所が分かりづらく知っている人も多くないせいか、物書きには出会った試しがないという。
わたしが趣味で書いているだけだと伝えても、謙遜する必要はないと言って文筆家と思い込んでいるようだ。
ただ、勘違されていた方が話を聞くうえで好都合ではないだろうか。
そう考えたわたしは、自分の生業について明言するのを避けることにした。
男性は、この街も随分変わったとかあの店が美味いなど、とりとめのない話ばかりしている。
尽きることのない四方山話に辟易し始めたころ、話題は彼自身の昔話へと変わった。
聞けば今でこそ平穏な日常をおくっているが、かつては筆舌に尽くし難いほど慌ただしい毎日だったのだとか。
その中で、決して忘れることの出来ない体験があるのだという。
彼はホットコーヒーを注文すると、これまでの陽気さに反して静かに語り始めた。
あれは昭和63年のことだ。
時代はバブル景気の真只中。
私は建設業の現場指揮官として働いていた。
高層ビルや商業施設が次々と建てられ、バブルの恩恵を受けた人々は浮足立っていたよ。
もちろん、私が勤めていた会社も例に漏れず仕事が舞い込んだ。
だが、人手は全く足りていなかった。
それは競合他社も同じである訳だから、人材確保に苦戦するのは当然だろう。
高額な給与を提示し、来る者は皆採用にすることで少しでも戦力を増やそうとしたが、必要な人数の半数も集まらなかった。
しまいには、従業員の家族や友人にまで募集をかける始末だ。
私は不安になったよ。こんな人数で仕事をこなせる訳がないと。
今日いちばんよかった
映像化してほしい
引き込まれました。
引き込まれました
よかった。怪異の実態は直接そこに現れる事も無く、けど情景はしっかり目に浮かんで怖かった。
地味に怖い
その婆さん何者だよ
強すぎじゃね?
やっぱり怪異はこのくらいの書き方の方が映えるね
超常現象かどうか微妙なラインでとどめておくのがベスト
老婆がどんな呪いをかけたのかを明確には言わないのも良かった
そこで神主が人形を使ったどうたらこうたらの呪いですと説明してたら正直萎えてた
この作品を正当に判断できる評価者がいることを切に願う。今まで数々の怪談を目にしてきたが、この作品はクオリティが違う。文学作品としての気品すら感じる。
これ読むと他の話が幼稚に見える
箱に入った人形と鏡が、「後遺症ラジオ」の〃おぐしさま〃で再生されてゾッとした
この話は有り得ない
あの時代だったらこの婆さんは呪いをかける前に居なくなっているはずだから
言い方変だけど、よく出来てるなぁと思った
だからタイトルの「向かい合わせの怪異」というのにも意味があると思うんだけど、考えてもわからない。何が向かい合わせなのかわかる人いる?
もう小説家デビューしていいクオリティ。
引き込まれた。
読み応えありました。
過去似たような怪談を目にしましたが、クオリティの高さではトップクラスですね。
難をいえば、タイトルで損をしていると思います。
私の想像力が不足していることもありますが、どなたかも指摘していたとおり、「向かい合せの怪異」とした理由と根拠がいまいちわかりにくい点でしょうか。
本文を読み進むうちに、なんというタイトルだったかすら忘れてしまうほど優れたストーリ展開なので、単純にもったいないなぁと思った次第です。
サトウと友人の幻覚怖っ
あもすっごぃ。
今まで見た中で1番文章力が高い。プロの小説家かと思いました。
恐怖は快感だが、ビックリするのは不快。
文章ホラーのいい所は映像ホラーみたいにデカい音と視覚効果でビックリさせて満足する駄作が無い所だな