向かい合わせの怪異
投稿者:r.s (1)
それでも時代が時代だ。
社長は気合で何とかしろと言うばかりで、現場のことなんか考えちゃいない。
自分は高級外車で送迎されて美味いものが食えればいいのさ。
夏の訪れを感じた頃、我々は複合商業施設の施工に取り掛かろうとしていた。
山間の広大な敷地に宿泊施設はもちろんのこと、大浴場や屋内プール、飲食店からボーリング場まで、遊びに必要なものは全て揃っていたよ。
これが完成したら、従業員の皆で来てやろうなんて話していたもんだ。
ある晴れた朝、いつもそうしているように施工前の地鎮祭を行っていた時のことだ。
神主が祝詞を読み上げていると、上空に凄まじい騒音が響き渡った。
まるで金属が軋むような、何とも言い難い音だ。
皆で何事かと空を見上げても、音の発信源となり得るものは見当たらない。
その場にいた全員が耳にしたのだから、聞き間違えではないはずだ。
不思議なこともあるもんだ。
そう思って視線を戻すと、神主が倒れこんでいるではないか。
すぐに駆け寄って声をかけるも、どうも様子がおかしい。
神主はガタガタと震えてしきりにうわ言を言っているものだから、うちの事務員を付き添わせて切り上げてもらうことにした。
そうして地鎮祭も半ばに仕切り直そうとしたんだが、若い作業員はえらく怯えてしまってね。
「災いの前触れだ」とか「土地神の怒りに触れた」だの口々に言ってきかない。
給与に色をつけるからと伝えて、やっとのことで思い留まらせた。
これ以上、貴重な作業員が減っては仕事にならない。
ただでさえ人手が足りていないんだから。
私が皆を励ますと、最後まで頑張ろうという気持ちになってくれたようだった。
それから、過酷な日々が続いた。
皆は通常の倍以上働いている。それでも作業が追いつかない。
過労で倒れる作業員も出てきて、現場はいっそう混沌とするばかりだ。
そのうえ、こんな労働環境だから辞めたいと申し出る者が何人も現れてね。
日を追うごとに一人、また一人と現場を去って行ったよ。
私を含めて残された作業員は死に物狂いで働いたさ。
少ない人数のまま2ヵ月が経とうとしていた。
作業こそ遅れていたものの、人員の数を考えれば悪くない進み具合だったと思う。
建物全体の土台はおよそ仕上がっていたし、うまくいけば期日には間に合うかもしれないと感じるほどだった。
今日いちばんよかった
映像化してほしい
引き込まれました。
引き込まれました
よかった。怪異の実態は直接そこに現れる事も無く、けど情景はしっかり目に浮かんで怖かった。
地味に怖い
その婆さん何者だよ
強すぎじゃね?
やっぱり怪異はこのくらいの書き方の方が映えるね
超常現象かどうか微妙なラインでとどめておくのがベスト
老婆がどんな呪いをかけたのかを明確には言わないのも良かった
そこで神主が人形を使ったどうたらこうたらの呪いですと説明してたら正直萎えてた
この作品を正当に判断できる評価者がいることを切に願う。今まで数々の怪談を目にしてきたが、この作品はクオリティが違う。文学作品としての気品すら感じる。
これ読むと他の話が幼稚に見える
箱に入った人形と鏡が、「後遺症ラジオ」の〃おぐしさま〃で再生されてゾッとした
この話は有り得ない
あの時代だったらこの婆さんは呪いをかける前に居なくなっているはずだから
言い方変だけど、よく出来てるなぁと思った
だからタイトルの「向かい合わせの怪異」というのにも意味があると思うんだけど、考えてもわからない。何が向かい合わせなのかわかる人いる?
もう小説家デビューしていいクオリティ。
引き込まれた。
読み応えありました。
過去似たような怪談を目にしましたが、クオリティの高さではトップクラスですね。
難をいえば、タイトルで損をしていると思います。
私の想像力が不足していることもありますが、どなたかも指摘していたとおり、「向かい合せの怪異」とした理由と根拠がいまいちわかりにくい点でしょうか。
本文を読み進むうちに、なんというタイトルだったかすら忘れてしまうほど優れたストーリ展開なので、単純にもったいないなぁと思った次第です。
サトウと友人の幻覚怖っ
あもすっごぃ。
今まで見た中で1番文章力が高い。プロの小説家かと思いました。
恐怖は快感だが、ビックリするのは不快。
文章ホラーのいい所は映像ホラーみたいにデカい音と視覚効果でビックリさせて満足する駄作が無い所だな