あのタクシーはどこに行ったんだろう

僕は最近会社に嫌気が差し、退職した25歳、男。

前職は自動車部品の営業だった。
ありえないノルマと、サービス残業の連続により心が折れたのだが・・・元々車関係で働いてたから、経験を活かし、次に転職するのだって「同業種」で探す。

共感してもらえるか分からないけど、「前の職場がヤバくて辞めたのに、次の職場がそれよりもヤバかったパターン」が存在する。

僕が今まさにその「職場選びガチャ」を思いっきり外したわって思える状況に遭遇している。

ハローワークで求人票を吟味し、職場見学もさせてもらい大丈夫だと踏んだのだが・・・。
求人票には、「定時退社。残業無し」→実際には残業が無い日が無い。
「先輩が丁寧に指導します」→仕事は見て覚えろ。こんな事も分かんねぇのか。
「和気あいあいとしたアットホームな職場です」→家に帰りたければ契約を取ってこい。

さすがこの時代まで生き抜いてきたブラック企業・・・入社するまでそれを悟らせない技術と経験がある。僕はまんまとそれに引っかかってしまった。自己責任なのだが・・・解せぬ。

で、今僕はこの職場の部長と、少し年上の先輩と飲みに来ている。
今日で3日連続。現在午後１１時半・・・正直帰って寝たい。

まだこの職場に入って１週間なので給料は出てない。
貯金は少しあるが、この飲み会は基本割り勘なので、まだ給料もらってない状態で、しかも研修期間で低賃金だから、頻繁にこの飲み会イベントが発生するのはよろしくない。

部長「おい！お前全然ビール減ってねぇじゃねえか！舐めてんのか！！」
先輩「部長のおっしゃる通り！お前そんなんでこの業界渡って行けねぇぞ！！」

何でこの人たちは３日連続で酒浴びるように飲んでて、体調崩さないんだろう・・・。
僕は慣れない職場の疲れと、この二人の体育会系のノリに正直参っていて、「すいません・・・はは・・・」と返事するのがやっとだった。

部長「お、そろそろ時間だな。おい、おあいそ」

この飲み会の唯一の良い所は「時間が決まっている飲み放題」だと言う事くらいだ。

２１時から３時間のプランで、料理入れても１人４０００円前後で済む。
が、この飲み会が終わるのは日付が変わる頃・・・つまり終電が無い時間。

部長「おい、タクシー乗り場に行くぞ」
先輩「御意」

御意じゃねぇんだよ。昨日もその前もこのくだり見たけど、タクシー代は割り勘でも１人１５００円は掛かる。明日も、明後日もコレやられたら体も財布もボロボロだ。
しかし帰る術はもはやタクシーしかないので、しぶしぶ付いていく。

タクシー乗り場には、僕らと同じように酔っぱらった人たちがタクシーを待つ列が出来ていた。

部長「今日はいつもより混んでるな」
先輩「そのようで。部長はベンチで休んでいてください。私は水を買ってきます。」
先輩「お前は列に並んでるんだぞ」
僕「・・・・・・はい」