ススムさん
投稿者:太田 馨 (2)
短編
2025/02/01
21:28
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私が小学校に入学したての頃、
”ススムさん”という不審者が
通学路でよく目撃されていたんです。
初老の男性で、白くて不潔な長い髭に
自分で整えているのか長さがバラバラの白髪。
そんな、”いかにも”な見た目をしているから
地区の皆はススムさんを避けていました。
なにぶん、斧を持って男子生徒を追いかけた
下校中の女子生徒に抱きついた。という
噂もあったくらいですから。
ある日、私と妹はいつもの様に学校から
家まで歩いて帰る途中でした。
歩き慣れたあぜ道を鼻歌交じりで歩いていると
後ろの茂みから、ススムさんがぬうっと出て
「遠慮せずに、お菓子を食べにきなさい」
と、私たちを見もせずに早口で言いました
その時私は、有名な不審者と出会ったから
怖かったのではなく、淡々と機械的に
まるでゲームのNPCかのように
自分たちに見向きもせずに喋るススムさんが
とてつもなく怖かったのを覚えている
結構です。とか、大丈夫です。みたいな
適当な事を口走った後に
私と妹は逃げるように走りました。
私はススムさんが追いかけてくるものと
思っていたので、妹に全力で走るように言いました。ですが妹は立ち止まって言うのです。
「ススムさん、おいかけてきてないよー」
え?と思って振り返るとそこには
地面にうずくまりながら泣いている
ススムさんの姿がありました。
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