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心霊

AAA×スバルさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

白昼の廃屋
長編 2025/01/20 12:53 2,073view
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関東某所に、一家心中があったとされる廃屋があった。
翔太がその廃屋の話を聞いたのは、バイト先の先輩である剛と外で休憩していた時だった。

「聞いた話じゃさ、すげー綺麗な女の幽霊が出るらしいんだよ。翔太、一緒に行かないか?他の友達は怖いからって行きたがらないんだよ」
「い、いやいやいや無理ですよ!俺も怖いのとか幽霊とかダメなんで!」
「じゃあ夜はやめて昼間に行こうぜ!明るければ怖くないだろ?」
「いやいや……」
結局、気の弱い翔太は半ば強引に連れていかれる形で、その廃屋へと向かうこととなってしまった。

蝉の鳴き声が響く夏の真昼間、二人は汗だくになりながら例の廃屋へやって来た。
周囲にはまばらに住宅があるが、その中でもこの廃屋は異様に目立っていた。
夏の太陽を反射させる真っ白な壁と、おそらく廃屋化してから荒らされたであろう割れた窓ガラスや破れたカーテン。

おそらく住人がいた頃は立派だったであろう大きな門扉も、すっかり朽ちてボロボロになっている。
「これ開くのかな」
そう言いながら剛が軽く押すと、ギィィィと音を立てて小さく開いた。
錆び付いているせいか、全開にはならないようだ。
「よし、入るぞ」
「ええ〜本当に入るんすか……」
背の高い雑草を掻き分けながらずいずいと玄関へ向かっていく剛を、やっとの思いで追いかけていく翔太。
歩く度に草むらに隠れていた虫達が飛び立って顔に当たってきた。

「お、玄関開いた!翔太早く来い!」
「待ってくださいよー」

翔太が追いつくと、剛がゆっくりとドアを開けた。
途端に、むわっと熱い空気と埃やカビのような臭いが二人に降りかかってきた。
「うわ、ここ入るんすか?」
翔太が聞くより早く、剛は玄関に足を踏み入れている。
「早く入ろうぜ。いくら人通りが少ないとはいえ、こんな所に入ろうとしてるの見られたらやべーからな」
確かに、誰かに見られて通報でもされたら厄介だ。翔太は恐る恐る剛の後について玄関をくぐった。

窓ガラスやカーテンは荒らされていたものの、部屋の中は思ったよりも綺麗だった。
リビングにはテーブルと四人分の椅子がそのまま残っており、台所の食器棚にも食器類が綺麗に収納されている。
壁には古そうなカレンダーが掛かっていたが、誰かが悪戯で火をつけたようで焦げていた。
カレンダーの横には仲睦まじい家族写真が数枚飾られていたが、どれも半分以上焦げていて顔を確認することはできなかった。

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