終バス
投稿者:エノエノ (8)
私がまだ20代前半だったころの話です。
その時の私は静岡の地元でバーテンダーをしておりました。
大学生の彼女がおり、地元から都内へ通っていたので私が休みの日は
新宿まで迎えに行くのが日課となっておりました。
その日もいつも通り夕方に都内へ行き、居酒屋で晩御飯を済ませ最終バスで
地元へ帰りました。
新宿から私の地元へ向かうバスはちょうど終点で止まる為、寝過ごす心配も
無いので好んで使っております。
私たちの他にもちらほらと乗客はおり、お互いお酒を飲んでいるので帰り道は
二人とも寝てしまいます。
ふと目を覚ますと終点まであと2つといった所。乗客はもう2組ほどで、彼女はまだ
寝ておりました。
なんとなく窓の外を眺め時間をつぶし、そのまま終点へ。
私たちは後部座席の方に座っていたため、降りるのは一番最後。
若干寝ぼけている彼女を支えながらバスを降りました。
バスの扉が閉まったと同時に彼女が『あ、お茶忘れた!』と言って走り出そう
としているバスに戻ろうとしました。
私は引き止め、『もう動き出すところだからやめておこう』と言い腕をつかみました。
彼女は申し訳なさそうに、走り出すバスを見つめます。
『あれ?あそこみて』と私たちが座っていたであろう席を指をさしました。
誰か乗っている
少し離れてしまった為シルエットもちゃんと確認はできませんでしたが、黒い服を
着た長髪の女性だったと思われます。
私たちが最後に降りたので、運転手の方以外誰も乗っていないはずなのに。
そのバスをただただ見送るだけしかできなかった私達。
お酒のせいもあったかもしれませんが、私たちはそこからバスを使うことは無くなりました。
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