【short_85】飛行禁止措置
投稿者:kana (210)
ある時、おかしな夢を見た。夢の中でベッドから起き上がり、部屋を出て行こうとした。
振り返ると自分はまだベッドの上で眠っている・・・。
「あぁ、これは夢なんだな」そう思った。
「そうだ、せっかく夢なんだから、空でも翔んでみようか」
そう思ってベランダから裸足のままジャンプして、空を翔んでみた。
けっこう難しい。隣のマンションの屋上に足をかけ、蹴り上げてさらに高度を上げる。
だんだん慣れて、スイスイ翔べるようになった。これはなかなかおもしろい。
満月に照らされながら、気持ち良い風に吹かれて下界の街並みを見る。
「ずいぶん高いところまで来たなぁ・・・」
「オイ、キサマ、待て」
突然声がして、そっちを見た。
そいつは全身が真っ黒で、炎のように揺らめいており、輪郭ははっきりしなかったが、
コウモリのような形の巨大な翼を広げ、真っ赤に光る眼をこっちに向けてきた。いかにも恐ろしげな雰囲気で空中にいる。悪魔か死神がいるとしたらきっとこんな姿なんだろう。
「オマエ、なぜこんなところにいる・・・紐があるな。まだ死んではおらんようだ」
「えっ?・・・あの~夢なんです、コレ。ボクの夢」
「そうか。ならば二択だ。選ばせてやろう。このまま天国に行きたいか、それともベッドに戻りたいか。天国に行きたければ、その紐を切ってワシが案内してくれよう」
なんだかこのオッサン、怖い事を言う。ケンカしても勝てなさそうだし、ここは大人しく帰ることにしよう。「ベベベ、ベッドに戻らせてもらいま~~~す」
「ならば早く戻るが良い。良いか、たとえ夢とは言え二度と翔ぶことは許さぬぞ」
「も、もし・・・翔んだら?」
「即、死んでもらう」そう言って、そいつは巨大な鎌を振り下ろした。
「うわっっ!!」・・・ボクは目を覚ました。そこはベッドの上・・・と思ったが、見知らぬベッドの上だった。しかも全身に管がつながれ、包帯だらけだ。ボクの声を聞いて田舎にいるはずのボクの家族や、医療関係者が入ってくる。どうやらここは病院のベッドのようだ。
後から知った。ボクはあの夜、ねぼけてマンションベランダから飛び降りたらしい。
一命は取り留めたものの、全身に骨折や裂傷がある重傷だった。
ボクは改めて、夢の中ではもう翔びませんと誓ったのだった。
酒飲みすぎて、記憶ないんだろ(*´∀`)。
危険ドラック1D-LSDを摂取してマンションから飛び降りる例が多発っていうニュースやってた。