【short_32】ジサツヘノイザナイ
投稿者:kana (210)
ホラー映画や怪談に時々出てくる「喜びながら自殺する人」ってホントにいると思いますか?ボクはいると思ってるんです。実はボクもそうでしたから。
ある日、眠っていると、天井から顔を覆うほどの巨大な蜘蛛が降ってきました。
深夜に絶叫して飛び起きました。その蜘蛛の幻覚を境に、不思議な精神状態に陥りました。
ボクはこの時、なぜか自分の体の中に「魂」のような存在がある感覚に襲われました。
本当の自分は『ピンポン玉』くらいの『魂』そのものであり、それが人間というガランドウな殻の中に閉じ込められて、頭の先からつま先まで、真っ暗な殻の中を飛び回ってあちこちぶつかり、何とかしてこの殻をやぶって外に出て自由になりたいと、そんな感覚に陥ったのです。・・・そしてボクは、とても良いことを閃きました。
「そうだ、このマンションの屋上から飛び降りて、地面に叩きつけられれば、
きっと体のどこかに穴が開いてボクの魂は殻の外に出ることができるはずだ!」
ボクは自分がマンションの高所から飛び降りて地面に叩きつけられる姿を想像をしてみました。(・・・なんと清々しい気持ちよさ!爽快な気分!!) 自分は高いところが怖いはずだったのに、なぜか今は飛び降りたくてワクワクしはじめているのです。
「そうか、今日がボクの命日だったんだ!そうかそうかwww」
ボクは自分の考えにすごく納得し、うれしくなって立ち上がり、外に出ようとしました。
ところがここで不運なことに、と言うか幸いなことに、このマンションは5階建てなのですが、エレベーターがなく、5階までは階段を使わねばなりません。ボクは前日からの不眠で体が泥のように重く、階段を一歩も上がることができませんでした。
野良猫をもふっているうちに、やがて少し冷静になってきて、喜んで自殺するなんておかしいと気付き、近くの精神科を探したのです。藁にもすがる思い・・・とはこの事です。
心療内科へ行った結果、「おそらくパニック障害でしょう」と診断されました。
この時、ものすごく気持ちが晴れ晴れとしたのを覚えています。「パニック障害」だと判明したことで、何かが解放されたかのような気持ちになったのです。
それから、5年ほど投薬を受ける日々となりました。
すぐに症状が治るわけではなく、日々薬で落ち着かせながら治療していくのですが、しばらくの間は、鉄塔などを見ると「ああ、あそこから飛び降りたらどんなに気持ちいいだろう」と、ワクワクする自分を抑える日々が続きました。
もしこれを読んでいる方で、似たような経験がある方は、まずは試しに診療内科や精神科へ行ってみることをお勧めします。
・・・きっとまだ・・・希望が残っているはずですから。
kanaです。読んでいただきありがとうございます。
今回は、過去に投稿した「自殺への誘い」という4ページ物のお話を短縮して1ページに編集させていただきました。それとともにタイトルをカタカナのみに変えました。「自殺への誘い」と書くと「じさつへのさそい」と読む朗読者様もいたからです。イザナイの方がカッコイイでしょ?
短編を読んでおもしろかったら、是非長編の方もお読みください。隠れた情報がいっぱいです。
一応言っておくと、これは創作ではなく完全リアルです。よろしくお願いします。(kana)
野良猫様様ですね。