お札を剥がして
投稿者:菅田 浩平 (1)
これは、俺がゲームセンターでバイトしていた頃、後輩の森本(仮名)くんから聞いた話。
森本くんが小学校高学年の頃。浅田(仮名)くんというクラスメイトがいた。
浅田くんは、日頃から「あそこに女の人がいる!」とか「変な声が聞こえる」など、霊感アピールをする子で、森本くんを含め、クラスメイト全員が浅田くんを嫌っていた。
そして、森本くんのクラスは、そんな状況で修学旅行を迎えることになった。
修学旅行は、広島で二泊三日。だが、森本くんは素直に喜べないでいた。
理由は、初日に宿泊するホテルの部屋割り。
先生がランダムに割り振った部屋割りのせいで、浅田くんと一緒の部屋になってしまったからだ。
県外の初めて泊まるホテルで、心霊アピールなんかされたら、嘘とわかっていても、不安になってしまうことは明白だった。
「やばい! 落武者が怒ってる!」
開口一番。例の如く、浅田くんは部屋に入ると、同時にそんなことを口にした。
「「ッ…………」」
浅田くん以外の、その場にいた四人は一斉に顔を見合わせた。
みんなは不安な表情をしていた。森本くんは、意味もなく不安にさせる浅田くんに対して、激しい怒りが込み上げた。
「おい、浅田! テキトーなこと言うなよ!」
森本くんが声を荒げて、浅田くんの発言を否定したが、
「嘘じゃないよ! ほら! そこに落武者がいる!」
しかし浅田くんは、さらにそれを否定して、何もない部屋の隅っこを指差した。
それには、森本くんの怒りのボルテージも最高潮に達した。
そして、彼はひとつの解決策を提案した。
「じゃあ、幽霊がいるって証拠見せろよッ!」
「——そこの絵の後ろにあるお札を剥がせって、落武者が叫んでる!」
浅田くんは、怯えながら壁に掛けられた一枚の絵を指差した。
子供の頃からみえるのは気味がられたりして可哀想だよね。