お札を剥がして
投稿者:菅田 浩平 (1)
短編
2023/09/05
12:58
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どこにでもあるような、昭和の街並みを描いたような風景画。
森本くんは、浅田くんが嘘をついていると証明する為に、すぐさま壁に掛けられた絵に手をかけた。
「お札なんかあるわけ——」
勢いよく絵を外すと、後ろから出てきたのは赤いお札。
そして、それが見えたと、同時に——
「ヤバい! 早く剥がして! 落武者が怒ってる!」
浅田くんの鬼気迫る表情と、尋常じゃないほどの怒声。
それに驚いた森本くんは、咄嗟に赤いお札を剥がして、すぐさま部屋から出ていってしまった。
そのあと、担任の先生に事情を説明し、森本くんたちの班は先生と同じ部屋で寝ることとなった。
森本くんの話は、そこで終わりだった。
「え、おわり?」
俺は、森本くんに食い気味にたずねると、
「はい」
と、満足げに答えられた。
だが、そんなので納得できるはずもなく、一番ききたいことをたずねた。
「いやいや、お札はどうなったの?」
「え、知らないっす! そのあと、すぐホテルを後にしたんで」
「……じゃあ、もしかしたら、まだお札が剥がれたままかもしれない?」
「そうっすね」
…………もしかしたら、今もまだ、あの部屋で、同じような体験をしている人がいるかもしれない。
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子供の頃からみえるのは気味がられたりして可哀想だよね。