軍服の人
投稿者:ハイク (5)
私が特別養護老人ホームで働いていた時の話です。当時98歳くらいのおばあさんが特別養護老人ホームで「看取り対応」となっておりました。
看取りとは無理な延命治療などは行わず、高齢者が自然に亡くなられるまでの過程を見守ることを「看取り」と呼びます。 最期を見守るような意味です。
車椅子に座って身長も小さく、声も小さい声でしゃべっているおばあさんだったので個人的には可愛いなと思っていて気に入っていた利用者さんでした。
そのおばあさんは、認知症ではあったものの、昔の事をよく話してくれました。娘が一人いたけれど、旦那さんは戦争に行って死んでしまったこと。旦那さんの弟(12歳年下)と再婚して娘を育てたこと。などを色々話をしてくれました。
私が入職して5か月くらいたってからか。どんどん食が細くなり食べられなくなってきました。
全く食べられなくなってから液体の高カロリージュースを飲むようになって、それも飲めなくなってきたころもう最後だと思った施設側がキーパーソンである娘と夫を呼んで夜中に一緒に過ごすことを許可しました。
夜勤もしていたので私も時々様子を見たりしていました。
とうとう最後の日に、瞳孔が開いたり閉じたりを繰り返して、おばあさんはお亡くなりになりました。
ご家族に見守られながらゆっくりと最期を迎えました。そして大きなワゴン車で病院に運ばれていきました。(ドクターに死亡診断書をもらうために病院に運んだ)
それから次の日。おばあさんの荷物が運び出され、使っていたベッドとマットレスが部屋に置かれたままになりました。
部屋の空気の入れ替えをするために窓を全開にして開けていました。部屋からはけたたましい風の音がバンバンと響き渡っていました。
ふと、部屋を見るといるはずのない部屋に異様な雰囲気が漂い始めました。部屋がカーテンがたなびいて風の音がバンバンと響き渡っていたので、誰もいるはずがないのに、とにかく異様さがあったのです。
はじめは私の勘違いかな?と思いましたが、霊感の強い子がきて「あの部屋、何かいますね」と言ったのです。
どうやら私の勘違いではなかったようです。異様な雰囲気で重苦しい雰囲気があったのですが、風の音でうるさいし、ドアもバンバンと鳴り響いていたので仕方ないと思いつつ、部屋のドアをあけて窓を閉めようとしました。
部屋に入って窓を閉めようとしたその時、確かに私の後ろに人の気配がありました。部屋に私しかいないのにです。異様な雰囲気で重苦しい何かがそこにいたのです。
振り返るとそれは、軍服を着た若い男性が立っていました。身長はそんなに高くなく、160センチより少しおおきいくらいか。襲ってくる様子もなくたた佇んでいたようでしたが怖くなってその人を避けながら私は部屋を出ました。
もしかしたら、おばあさんに会いに来たのか?それともおばあさんを看取ってくれてありがとう、って思ってくれてたのか。それは今でもわからずじまいですが、雰囲気が重かったのだけは覚えています。
その後、その部屋に新しい利用者がくるまでその雰囲気は残り続けていました。姿を見たのはその日だけでした。
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