私たちは助けられなかった

親から愛情を受けない子供っていますよね。

虐待されたり、ネグレクトを受けたりと、苦しい毎日を過ごす子供は後を絶ちません。

私の親は幸いなことにそのような両親ではありませんでした。

特別にではありませんが、人並みに愛されて育てられたと思います。

だからこそ、私はその子の状況がよく分かりませんでした。

無知だったばかりに、私は一人の命を助けられなかったのです。

その子と出会ったのは家から近い場所にあるコンビニでした。

コンビニの前で蹲っている同じ年くらいのその子に「どうしたの？」と私が声をかけたのがきっかけでした。

ぐったりとしていて、元気がなくて、私は母に言って家に連れてきたのです。

どこの誰とも知らない子でしたが、とにかくおなかがすいているみたいでした。

母が「お母さんはどうしたの？」と聞いても、何も答えないのです。

家に帰ってお菓子をあげるとその子はまるで数日ご飯を食べていなかったかのように慌てて食べ始めました。

食べたらその子は「家に帰る」といい、そのまま去っていきました。

私と母親はくすくす笑って手を振ったのです。

とにかくおいしそうにお菓子を食べるその子を見て、嬉しくなりました。

お菓子をあげて良かったなと思いました。

でも私たちはあまりに虐待という現実に起きていることに疎かったのです。

そのせいで、うっかり見逃してしまいました。

それから半年くらい経った頃と思います。急に家に人が訪ねてきました。

誰かと思ったらいつしかのコンビニで出会った女の子で、私と母は久しぶりと家に入れてあげました。

元気だったかと聞くと、その子は頷いて答えてくれました。

私とその子は一緒にままごとをしたり、ごっこ遊びをしたり、ゲームをして遊びました。

その子はずっと目をキラキラさせて、楽しそうに遊んでいました。

そわそわし始めたかと思うと、その子が「帰る」と言ったのです。

ご飯食べていく？とかお菓子食べる？と母が勧めたけど、今度は首を振りました。

なんというかやりたかったことをやり切ったような清々しい笑顔で、すごく嬉しそうでした。

「ありがとう」という彼女に、私たちは前と同じように手を振って見送ったのです。

しかし、夕方テレビを付けると痛ましい虐待のニュースが流れました。

そしてその写真を見て、私と私の母は驚きに目を見開いたのです。

明らかにその子は今日家に訪ねてきた子でした。