あの日見たもの
投稿者:ぎゅぅっ (11)
これは私が大学生の頃のお話です。
私は大学進学で地元を離れましたが、大学が夏休みに入り帰省していました。その帰省中に地元の友人から「今別の友人も含めて3人でいるので、今からドライブにでも行かないか?」と誘いがありました。
特にその日予定もなかったので、私は誘いにのりました。時間は夜の19時ごろでした。
程なくして、誘ってきた友人が車で迎えに来ました。大学生になってからバイトでお金を貯めて中古の軽自動車を買ったんだとその友人が言っていました。
特にあてもなく車を走らせ、みんなで大学でのエピソードや、彼女ができたできてないみたいなたわいもない話をしながらドライブを楽しんでいました。
そして、地元のダムがある山道を走っていました。しかし、その山道を走って真ん中あたりまで来た時、運転をしていた友人が急にブレーキを踏んだのです。
私も他の友人たちも突然の急ブレーキに驚き、運転手の友人にどうしたんだと聞きました。運転手の友人曰く、何か白い人のような物体が目の前に現れたため、慌てて急ブレーキを踏んだとのことでした。
私も含め、他の友人たちも全くそんなものは見えておらず、夜ということもあってゴミか何かを見間違えたのだろうという話になりました。
運転手の友人はなにか気味が悪そうに、早くこの山道を出ようと車を飛ばし始めました。
その山道が終わりに差し掛かり、大通りに出ようとしていた時です。後ろからパトカーが赤色灯を焚いて現れ、友人の車が止められました。素直に止まると、警察官が降りてきて運転手である友人に尋ねました。
「近隣住民の方から軽自動車がボンネットに血だらけの人を乗せて走行しているのが見えたと通報があったため、念のために止めさせてもらいましたが、なにか知りませんか?」
その質問に4人で顔を見合わせました。全員運転手の友人が見たその白い物体の話を考えたに違いありません。
結局実際にボンネットに人が血だらけで乗っているようなことはなく、警察官も「まあ住民の方が見間違えたんですかね。」と言ってその場を離れました。
私たち4人の車内には重苦しい空気が流れました。ある1人の友人が「偶然が重なっただけだ、見間違えは誰にでもあるから」と言って元通りに振る舞い、そこからはみんなその話には極力触れずにドライブを続けました。
その後、途中にコンビニで休憩したのですが、運転手の友人が突然叫びました。
車のボンネットにうっすらと手形が付いていたのです。もちろん私たちの誰かが付けたものではありません。私たちは怖くなり、ドライブはそこでお開きとなりました。
結局あの日友人が見たものも近隣住民が見たものも謎のままです。
しがみついたまま憑いてきていないと良いのですが…
念の為お祓いなどされてみては?