友人の話
友人は最後まで気づいていなかったが、自分がわざわざ指摘するのも却って悪い気がして黙っておいた
友人には独り暮らしの叔父がいて、叔父は田舎の山の中の一軒家で暮らしていた
友人はたまに叔父の家に遊びに行っては、釣りや山菜取りなんかをしていた
ある夏の日、友人は普段通り叔父の家に遊びに行った
着いてみると、凄まじい異臭がして、家の中には大量のハエが飛び回っていた
叔父は風呂場で亡くなっており、暑い日が続いたため腐敗が進み、見つけた時は半分溶けたような状態で、黒く濁った体液が風呂場のタイルに拡がっていたそうだ
友人はすぐに警察に連絡して、結論として事件性はなく、自然死として処理されたらしい
ただ、腐敗がひどく、叔父と思われる遺体の身元は特定できず、埋葬はさせてもらえなかったそうだ
警察から事件性はないと聞き、部屋に入る許可が出たので、友人は、綺麗好きだった叔父のために、家の掃除に行った
家は相変わらずすごい臭いで、風呂場だけでなく家中が異臭にまみれていた
友人はとにかく風呂場をなんとかするため、パイプクリーナー等で下水まで徹底的に掃除をしたそうだ
おかげで風呂場はまったく臭いがしなくなった
続いて、家中を飛び回っているハエを駆除した
まとわりつくハエを払いながら、窓を開けて追い出し、押入れなんかから出てこない奴はスプレーで片付けた
床にも大量のハエが落ちていて、全部掃いて捨てた
この辺りで友人は、なんだか家の中が暗く感じるようになった
友人は主がいなくなって家の雰囲気が変わったせいだと感じたらしい
叔父は朗らかな人で、いるだけで場の雰囲気を明るくするタイプだったそうだ
ハエを駆除し、臭いを消すために窓を開け放し、友人は一度帰宅した
あんな山奥では泥棒なんか来ない、と友人は笑っていた
帰宅した後も、友人は、自分の身体が、叔父の家と同じ臭いを発していることに気付いた
よく、臭いは髪にまで着く、という話を聞くが、友人は「それが本当だったと思い知らされた」と言っていた
その後もしばらく鼻から臭いが取れず、家にいても出掛けていてもあの臭いを感じていたそうだ
3日後、友人は再度叔父の家を訪れたが友人は驚いたという
家は相変わらずすごい臭いでその臭いにおびき寄せられたのか、ハエが飛び回っていた
原因となる風呂場を確認したが、むしろ風呂場は全く臭わなかったらしい
友人は怪訝に思いながらも、ハエを追い出し、窓を閉めた
いくら仲が良かった叔父のためとはいえ、流石に一軒家を大掃除するのは骨が折れるので、友人は断念したらしい
家に帰ると、またしても自分の家の中か臭いことに気付いた
ただ、今回は自分は臭くないが、どこからか臭いがする、という
友人は、ひょっとして住んでいるアパートの別の部屋でも誰かが亡くなっているのではないか、と考えたらしいが、特にそのようなことはなかったそうだ
さらに、出掛けた先でも、同じ臭いを感じるようになった、という
結局、友人は2週間近く臭いに悩まされたそうだ
鼻毛に臭いが染み付いたんじゃない?
特殊清掃の会社にお願いしたら?としか