海外で地震に遭った話
投稿者:ソレイル (10)
大学生の夏休み、私はアメリカに一週間の旅行をした。
海外を一人旅とは思い切った事をしたと、今となっては思う。誰か友人とでも一緒に行っていれば、あの恐ろしい出来事があったときも、少しは恐怖が和らいだだろうに。
当時はまだコロナもなく、アメリカの都市は活気に満ちていて、観光は楽しかった。
一通り観光を楽しんだ後、泊まる場所は特にこだわらず、サイトで見つけた適当な安ホテルに泊まった。安いわりに中は綺麗で快適だった。
夜、私は翌日のスケジュールを考えながらベッドに寝そべりスマホをいじっていた。
その時だった。突然、ガタガタガタ……とベッドが揺れ始めたのだ。
いや、ベッドだけじゃない。部屋全体が揺れていた。地震だ。しかもだんだん大きくなる。
ガタガタガタガタ!
私は身の危険を感じてとっさに飛び起きた。そして素早くテーブルの下に隠れ頭を守る。地震大国で培われた瞬発力だった。
ガタガタ!ガタガタガタ!!と、部屋の鏡台が危険な音を立て始めた。まずい、かなり大きい地震だ。近くの部屋から、女性の絹を割くような悲鳴が聴こえた。やはりみんな身の危険を感じているのだ。
海外の建物は日本ほど丈夫じゃない。これ以上大きくなると部屋が崩れるかもしれない。本気で怖くて、一時は死を覚悟した。
5分ほど揺れていただろうか、かなり長い地震だった。しかし幸運にも地震は少しずつ収まっていき、部屋が壊れたりすることもなかった。
私はひとまず安心した。そしておそるおそるテーブルから這い出し、ベッドの上のスマホを手に取る。地震情報を確認するためだ。まだ余震などに注意がいるかもしれない。
しかし奇妙なことに、位置情報を入力して調べても、なぜか地震情報が出てこなかった。
変だなと思いつつも、まだ情報が更新されていないだけかもしれないと思った。しかしそれから30分しても、地震情報は出ていなかった。
私は部屋のテレビをつけた。どのニュースも、さっきの地震を報じていない。まるで地震などなかったかように。
そんなはずはない、と不可解に思ったが、気が緩んだのともう夜更けだったのもあり、私はそのままベッドで寝落ちてしまった。それから余震に起こされるということもなく、私は朝までぐっすり眠った。
翌日、私は再び街で観光を楽しんだ。夜に地震があったことなど、すっかり忘れていた。日が暮れるまで外で遊び歩き、夜になるとホテルに帰ってきた。
しかしその夜、私は再び地震に遭った。昨日よりさらに揺れが大きく、床に色んなものが散らばって鏡が割れた。日本の地震が多い地域でもこんなことは珍しい。私はテーブルの下に隠れて震えた。命の危機を感じていた。
近くの部屋から、女性の泣き叫ぶような叫び声がした。そしてドガン!という何かに身体を強くぶつけたような音も聞こえ、私は「ああ、パニックになっているな」と妙に冷静に思った。
それから女性の悲鳴とともに、ドン!ドン!ドン!ドガン!と何度も何かをぶつけたような音が聞こえた。倒れてきたものに身体をぶつけたりしたのかもしれない。人の心配をしている場合ではなかったが、私は気がかりになった。
やがて地震は収まった。部屋は物が散らばって酷い有様だった。私はスマホで地震情報を確認したが、昨日と同じく何の情報も出ていなかった。流石におかしい。こんな大きな地震があったのに、ニュースにならないことなんてないはずだ。
さすがに疑問を感じたので、私はフロントのスタッフに訊ねに行った。ついでに悲鳴を上げていた女性のことが心配だったので、無事を確認してもらえるよう言おうと思った。
私は英語が得意というほどではないが、ざっくりした会話くらいはできる。「さっき大きな地震がありましたよね」「近くの部屋で大きな悲鳴が聞こえ、心配なので確認してもらえませんか」という感じのことを伝えると、スタッフから以下のような返答があった。
「あなたの他に泊まっている客はいない」
私は戦慄した。綺麗で新しいホテルなのに、料金が安い理由が分かった気がした。
恐ろしい事情を何となく察してしまったが、少なくともその夜はこのホテルで夜を明かすしかなかったので、それ以上何も聞かずに部屋に戻った。
部屋に戻るとき、周りの部屋を見たが、たしかに人の気配がなかった。昨日の時点でそれに気づけていたら、と猛烈に後悔した。部屋に戻ると私はヘッドフォンをつけ、大音量で音楽を流しながら布団にくるまって夜が明けるのを待った。
あのホテルは事故物件だった。部屋が揺れたのは地震ではなく、いわゆるポルターガイストだった。私が聞いた悲鳴は、かつてあのホテルで殺された女性の霊のものだったのだ。
帰国してすぐ、ネットで調べてそれが分かった。英語の記事は読むのが大変だったが、大体の意味は読み取れた。
怖
海外はスケールがでかいな