中学校の同級生のA君は部活のあと、一度帰宅して食事を済ませてから家の近くにある学習塾へ通っていました。
志望する高校に合格するためひたむきに頑張るA
君は塾の先生たちからも特に目をかけられ、塾が閉まる21時ギリギリまで勉強をみてくれたそうです。
学習塾から家までA君は徒歩で帰っていました。
街灯はあるものの人通りはほとんどなく、灯りを落とした民家や真っ暗な田んぼのそばを通るのはあまり気持ちのいいことではありません。
A君はイヤホンで音楽を聴きながら毎日急ぎ足で帰っていたそうです。
ある日いつものように塾から家までの道を歩いていると、背後から”カツン、カツン”と女性がヒールで歩く音が聞こえてきました。
ひとりぼっちで夜道を歩かずにすむことに安堵したA君でしたが、すぐに異変を感じました。
(激しいロックを大きめに聴いているのに、どうしてこんなにはっきり足音が聴こえるんだろう)
その事に気がついた瞬間
“カツン、ぺた、カツン、ぺた”
と足音が変わりました。
片足はヒール、片足は裸足で歩くようにしか聞こえない音がするのです。
怖くて足を速めたA君を追うように、奇妙な足音も続きます。
“カツン、ぺた、からんころん、じゃりっ、カツン……”と足音はもはやめちゃくちゃです。
たくさんの足にそれぞれの靴を履いた化け物を想像し、A君は目をつむり必死で走りましたが、つまずいて片方の靴が脱げてしまいました。
すると背後から突風が吹いた瞬間に足音は消えていました。
A君がおそるおそる辺りを見回しても何もいません。
安堵で泣きそうになったA君でしたが、脱げた靴がなくなっていることに気付き、一心不乱に片足だけ靴下のまま家に走って帰りました。
A君はその後も塾に通い続けましたが、遠回りになってもあの足音が聞こえた道は昼間でも絶対に通らなかったそうです。
あの化け物は今日も誰かの背後から忍び寄っているのかもしれません。
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