友人の猫とお婆ちゃんと
投稿者:take (96)
短編
2022/12/08
07:54
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私が中学一年生の時の話です。
同じクラスで友人になったFくんの家へ初めて遊びにいきました。
築年数がそこそこ経ってそうな一戸建て住宅です。
「俺の部屋二階なんだ」と言うFくんについて階段を上ろうとしたとき、
足元を一匹の茶トラ猫がさっと走り抜け、廊下の途中にある部屋の中へ入って行きました。
「猫飼ってるんだ」
私が言うと、
「そうだよ……また婆ちゃんの部屋へ入ったな」と、Fくんは猫の後を追って行きました。
私もついていくと、そこは八畳くらいの仏間でした。
猫は部屋の真ん中に座り、何かを一心に見つめています。
「いつもこの部屋の隅をじーっと見てんだよ、なんだろな」
Fくんは笑っていましたが、私には見えていました。
仏壇の遺影のお婆ちゃんが猫の視線の先で、にこにこしながら座っているのが。
「お婆ちゃん、いつ亡くなったの?」
「俺が小学校三年生のときだよ、すっごく優しかったんだよなあ……」
Fくんは懐かしそうに言います。
「そっか……」
私は仏壇の前に座っておりんを鳴らし、手を合わせると、「ありがとうな」と、Fくんは嬉しそうに笑いました。
「さ、いこうぜ……ほら、ここにきちゃいけないって言ってるだろ」
Fくんは猫を抱いて部屋を出ました。
私はお婆ちゃんにちょっと頭を下げて、後について部屋を出ると、Fくんの腕の中で猫が振り返り『ふうん、おまえも見えてるのか』と言いたげに私の顔を見つめてきます。
私がちょっと笑いかけると、にゃん、と猫が小さく鳴きました。
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