親切な友人
投稿者:やうくい (37)
大学生の頃の私は霊能者に憧れ、霊的なものに少しでも関わろうと日々奮闘していた。
心霊スポットを巡ったり、降霊術を試したり、霊に関わることならなんでも試していた。
そんな私は基本的に周りから避けられていたが、ただ一人、私を避けずに話を聞いてくれ、時々霊感を得るための方法を教えてくれたり、心霊スポットに付き合ってくれる親切な友人がいた。名前はAとしておこう。
Aには生まれつき霊能力が備わっているらしく、たまに聞かせてもらう体験談に目を輝かせていたものだ。
さて、下手な鉄砲も数を撃てば当たるというもので、どれかの行動が功を奏したのか、私にも念願の霊現象が訪れた。
とは言っても霊が見えたりした訳ではない。ある心霊スポットを歩いている時、いきなり誰かに足首を掴まれて転んだのだ。
驚きながらも、Aと一緒に来ていたこともあって私はとても興奮した。
「なぁ、さっき足首を掴まれたんだ!」
早速Aを呼んでその付近を見てもらった。「あ〜、いたずら好きな子供の霊だね。
君と遊びたくてちょっかいを出したんだ。」
微笑ましく思った私は、Aに勧められるがままお菓子とジュースを供え、その場で供えたお菓子とジュースを飲み食いした。
「これでこの子も成仏できるよ。」
Aは嬉しそうに笑っていた。
次の日、私は体調を崩していた。心霊スポットは不衛生だろうし、体調を崩すことは特に珍しくもない。ただ、今回は今までにないほど辛く、立ち上がると目眩がした。
昼過ぎ、食事もできず寝込んでいた私をAが訪ねてきてくれた。
「大丈夫かい?とりあえず何か食べた方がいいだろうから、食事を作るよ。」
Aはテキパキと台所で調理をし、たまご雑炊を作ってくれた。ちょうど良い塩味でとても美味しく、体調が良くなった。
「A、本当にありがとう。助かったよ。」
「気にすることないよ。体調が悪い時にはいつでも連絡してくれたらいいから。」
そういえば、Aには何も連絡していない。
なぜ私が体調不良だと分かったのだろう。
少し不思議に思い、Aに尋ねた。
「そういえば、なんで俺の体調が悪いってわかったんだ?助かったけどさ。」
「虫の知らせってやつかな。親しい人が苦しんでると、なんとなく分かるんだよ。」
次の日、だいぶ体調が落ち着いたため、大学に行くことにした。玄関で靴を履き、外に出た私は、ふと違和感を感じた。扉の前に置いていた盛り塩がなくなっている。ずいぶん長いこと放置していたので黒ずんでいたが、誰か捨ててくれたのだろうか。なんとなく置いただけだったため、特に何も思わず、皿だけ片付けておいた。
夕方ごろ、その日最後の講義が終わり、帰り支度をしていたところAが声を掛けてきた。
「やぁ、その後体調はどうだい?」
「おかげさまでだいぶ良くなったよ。」
「それはよかった。たぶん心霊スポットの悪い気にあてられたんだろうね。あそこは随分と悪い気が漂っていたから。」
そう言いながらAはカバンから何かを取り出し、私に渡してきた。
「こういう時は御守りが効くんだよ。ちょうど一個あるから持っておいて。」
それは、とても奇妙な見た目だった。
赤くて小さい板に、反時計回りの渦模様と、細かい字が書いてある。
字をよく見てみると
『由事白給清給祓穢罪事禍々諸』
と書いてあるようだ。
「なんて書いてあるんだい?」
漢字ばかりで私には意味が分からなかった。
「悪いものを祓ってくださいって書いてあるんだよ。祝詞ってやつさ。」
「よく効きそうだ。本当にありがとう。」
「気にするなよ。困った時はお互い様さ。」
Aは笑いながら手を振り、帰っていった。
怖面白かったです!!
その後のAの様子が書いてれば更に良かった。
>>2
友達いないからAの情報すら入らないのがリアル。
最高でした!