集会所の影

昔保育園の近くに、集会所がありました。

子供の頃から誰が集まる集会所なのかは分からなかったですが、看板に「集会所」と書いてあったのです。

子どもだった私たちはよくその周辺で遊んでおり、「集会所で集まろう」と大人ぶって言ったりしていたのです。

その日、みんなでいつのも場所に集まると、集会所の扉が開いていました。

いつも鍵がかかってぴったり閉じているのに、その日は扉が開いてなにやら中が騒がしいのです。

窓から人影もたくさん見えたし、好奇心いっぱいな子供だった私たちは友達5人くらいで、誘われるように集会所にこっそりと入っていきました。

勝手に入ってそこらをうろうろしていると奥扉の向こうから案の定、「コラー」と怒られてしまいました。

すぐに外に追い出されるかと思ったら、しかし誰も出てきません。

私たちは不思議に思いながら、奥の扉を開けてその向こうを覗いてみました。

そしたらそこは真っ黒なソファーと古い大きな机があるくらいで、人は誰もいなかったのです。

怒られた上、外にいるときはどんちゃん騒ぎが聞こえてきていたのに、中に入ると人が誰もいないのです。

なんだか怖くなって、私たちは集会所を飛び出しました。

「おばけだー」と言ってちりぢりに逃げました。

それ以来、何度そこに行っても、あの日のように鍵が開いていることは一度もなかったです。

今でもあのとき集会所に集まっていた人の声は何だったのかと不思議に思うことがあります。

大人になって話に聞いたかぎり、あの集会所は数十年前から誰も使っていないと聞きます。

じゃあ、あの日私たちを叱った声は誰だったのでしょうか。