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心霊

にこにこ熊さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

私の妹の不思議な力によって救われた母
長編 2022/10/23 14:40 1,646view

 私自身はまったく霊感は無いのですが、当時20代後半の私の妹は霊感というべきか、ちょっと不思議な力がありました。仕事から帰宅した途端、真っ青になって部屋に駆け込んだと思ったら、いきなり盛り塩をして自室に閉じこもるようなことがあったのです。
 あとで事情を確認すると、帰宅途中のトンネルで女性の霊が話しかけてきて「ついていっていいか」と聞かれてしまった、「何もできないからついてこないで」と言ったのに、諦めずについてきたので、お祓いをしているのだとのこと。気持ち悪いこと言うなあと思ったのですが、その時はあまり気にしていませんでした。

 その後も、2階の奥のスペースに知らない人の霊が立っているとか、職場の奥の扉の隅に知らない人の霊がずっとたってこちらをみているとか、さまざまなエピソードを話してくれていたのですが、彼女によると霊と人間との区別がつきにくいほど、はっきりと見えているので、たまに普通の人と間違えて話しかけてしまうとのこと。
 この間も職場であいさつしたら、相手がものすごく驚いたので、幽霊だと気づいたのだそうです。そういえば、また妹が小学生の低学年くらいだったころ、家族全員で一緒に旅行に行ったのですが、その日宿泊した旅館で「テレビの上に人間の首がのっかっている」といって泣き叫んだことがあります。私たちには見えませんし、何をバカなことをと一笑したのですが、その夜妹はうなされつづけ、翌日には高熱を出して旅行が中止になったという出来事ありました。 
 困った体質とでもいおうか、いろいろと不便な体質だと思ったのですが、普段の生活にはさほど支障がないようでしたので、私を含め、両親も笑って聞き流していたのです。 

 ところがある日、妹と二人で彼女の部屋で一緒にビデオを見ていた時の事、急に妹が、そわそわしはじめました。どうしたのかと尋ねると、なんだか嫌な感じがするとのこと。その時、窓を閉め切っていたので風もなく、地震がおこったわけでもないのに、棚にきちんと置いてあったぬいぐるみが、一つ、いきなり、ぽんっと落ちてきました。「えっ?」と思ったのですが、途端に妹が立ち上がり、「なんかあったのかもしれない。」などと不吉なことを言うように。 
 その瞬間電話のベルがなり、母が電話をとると、父親が職場で急に倒れたとのこと。気が動転しましたが、なんとか自身をおちつかせ、病院へとむかうと、父は脳梗塞を起こしてすでに意識不明の状態でした。状況が落ち着いたところで、妹に「このことだったのかな」と妹に確認すると「たぶん、そうだと思う。亡くなったおじいちゃんがおしえてくれたのかな。」などと話してくれました。 

 父はICUにいたのですが、妹は、その時も「白髪のおじいさんがニコニコしながら、壁の隅の方で立っているので、ちょっとしんどい」と付き添いを拒否したので、私と母で交代でつきそうことに。これも後で知ったのですが、笑顔の素敵な白髪の太田さんというご高齢の男性が、数週間前、その場で亡くなられたとのこと。

 父のことも心配でしたが、妹は、やっぱり妹には、霊感があるのだなあと改めて感じ、もしかしたら、今後の父親の状態についてもわかるかもしれないと思い始めており、その頃の私は、妹が何か言いだすのがちょっと怖いような複雑な気分になっていました。

 その後、数日後に残念ながら父親は亡くなってしまったのですが、妹はとくにそれに関して何かをいうことはありませんでした。すべてわかっていたけれども、私たちのことを思って、だまっていてくれたのかもしれません。 
 父が亡くなる数日前からは、あまり話もせずに、ぼんやりとしていることが多かったように思います。

 それから1年余りはとくに気になることもなく、普通に過ごしていたのですが、ある日、妹が母親に向かってひどく怒っている様子だったので、どうしたのかと問いただしてみると「父親が大切にしていた碁石を手放してしまった」のだそう。欲しがっていた人に、それならばと無料で譲ったのだそうです。
 妹があんまりにも怒り心頭なので、理由を問い詰めると「父が譲らないでくれと頼んでいると伝えたのに、譲ってしまったから」だとのこと。妹は父の霊と話ができるのだと、驚きましたが、母は娘のいつものたわごとだと相手にせずに、碁石を手放してしまったようです。私はかなり妹の霊感を信用するようになっていたので「お父さん、かわいそう」と思ってしまったのですが、母親はまったく意に介せぬ様子。
 一方、妹は、父親の霊と話をするとかなり疲れるから、苦労して希望を聞いたのに、無視されたと再び、怒っていました。二人の温度差にはちょっと笑ってしまいましたが、父親も母親のおおらかさは生前からよく理解していたのでしょう。それに関しては、とくに何も起こらずに再び時は過ぎていきました。

 父の死から3年ほどの時が過ぎ、母もだいぶ元気を取り戻し、私たちの生活も平穏を取り戻したころ、母親が「友達が旅行に誘ってくれたから、行ってもいい?」と言い出しました。もちろん、私たちに異論はありません。
 詳しく話を聞くと、50代の友人が自分の車を運転して合計3人で神戸に遊びに行くということでした。いい気分転換にもなりますし、なにより母親が久しぶりに本当にうれしそうなので、私たちは、ぜひ行ってきてと微笑ましい思いで彼女を送り出そうとしていました。

 ところが、旅行当日の朝、なんだか、妹の表情がさえません。話を聞くと「なんだか、わからないけど、お母さんに旅行に行ってほしくない気がする」などと言い出しました。最初は、笑って聞き流していたのですが、これまでのこともありましたし、なにより妹の表情があまりにも真剣だったので、私も心配になってきました。
 母親に話すとまた、笑い話にされてしまいそうで迷ったのですが、とりあえず、伝えてみました。すると案の定母は、「気のせい、気のせい」と笑い飛ばし、そのまま出かけてしまったのです。妹はだまっていましたが、やはり表情はさえません。しばらく重苦しい時間が流れました。

 その時、がちゃりと玄関が開く音がして、誰かがはいってきました。急いで玄関に出向くと、そこには母親の姿が。「やっぱり、○○ちゃん(妹の名前)が、そこまで言うと気になるから、私だけ取りやめて帰ってきちゃった。」と照れ臭そうに笑う母。
 思わず、ほっとして笑顔になる私、隣の妹をみると、彼女は私以上にほっとした表情をしていました。

 その夜、友達二人から連絡があり、旅行は何事もなく、楽しんでいるとのこと。豪華な食事をかこむ動画も送られてきて、ちょっと残念そうな母を見ながら、私も内心、「気のせいだったのかな」などと感じていました。「もう、○○ちゃんのせいで食べ損ねたわ」などと頬を膨らませていた母でしたが、その翌日、なんと、旅行にでかけた二人のうち、一人のご主人から電話で連絡がありました。

 なんと車で帰宅する途中、お二人は事故に遭い、不幸なことにお二人ともなくなってしまったとのことです。
 その話を聞いた時、母はもちろん、私も体中の震えがとまりませんでした。もし、あのまま、母が一緒にでかけていたら、事故に巻き込まれる事態は避けられなかったことでしょう。母はただただ、妹の手を握って涙ぐんでいました。
 妹の不思議な力が母親の命を救ったのです。このことをきっかけに、母親も妹の声に常に耳を傾けるようになりました。ただ、妹によると、幸か不幸か、妹自身の不思議な力は年齢を重ねるごとに少しずつ、弱くなってきているということです。

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コメント(1)
  • お母さんが無事で良かった。
    私の母なら止めても行ってたと思います。

    2022/10/23/16:22

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