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心霊

くすのき木霊さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

父が体験した不思議な話
長編 2022/10/17 11:50 3,654view
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父が子供の頃の話です。

(昭和30年代)北海道の、見渡す限り畑や田んぼしかない田舎町で父は少年時代を過ごしました。 これといった娯楽もなく、父はいつも学校から帰ると、畑の手伝いもそこそこに、野山を走り回っていたそうです。 運動神経抜群で、やんちゃだった父につけられたあだ名は『山猿』。その名前にふさわしく、父は木登りが大得意でした。

父たち子供たちは、学校の近くの神社がお気に入りで、秘密基地を作っては遊んでいたそうです。よくスズメをパチンコで打っては焼き鳥にして、おやつにしたり、 野性味あふれる放課後を楽しんでいた父ですが、ある時、とんでもないものを発見してしまいました。 それは、神社の御神木に打ち付けられた、藁人形だったのです。 噂には聞いていましたが、「都市伝説か昔話だろう」と今まで鼻で笑って取り合わなかった子供たち。いざ本物を目の前にすると、すくみあがってしまいました。

その日は、ほうほうのていで皆、家に逃げ帰りましたが、親に話しても、まともに取り合ってくれず。 しまいに「まともに家の手伝いもしないで遊んでるからバチがあたったんだ」と雷を落とされる始末。いつのまにか、子供たちのあいだでは、この話を持ち出すのはタブーと いうことになりました。 しかし、その藁人形を見つけてからというもの、父の身にたびたび不思議なことが起こるようになったのです。

藁人形騒動から数か月後、真冬のしばれるような寒い日、父たち子供たちは、例の神社のそばに分厚い氷の張った川の上で遊んでいました。その川の氷は、通常、大人が乗っても平気なぐらい分厚く、金づちでたたいてもびくともしないぐらい分厚い氷なのですが、なぜか父が氷の上を歩きだした途端、ひびが入り、割れてしまったのです。 父は冷たい川の中に落ちて、氷の下を流されてしまいました。 幸い、別の氷の穴からすぐ父は引っ張り出され、九死に一生を得ることができた父ですが、不思議なことはまだまだ続きます。

その年のクリスマス、夜のお使いの帰り道、小銭がたくさん入った缶をひろったそうです。ところがその缶にはどこにも物を入れる入り口がなく、缶切りで無理やり開けて、初めて大量の小銭と分かったそうでした。 後年、父は「サンタクロースも粋なことをする」と語っていました。

それから数年後、中学卒業後、すぐに就職し寮暮らしを始めた父ですが、寮の仲間数人が、病気と事故でそれぞれ若くして亡くなってしまいました。 悲しみにくれる寮のメンバーたちでしたが、それからしばらくたって、夜に寮の見回りに行くと、誰もいない卓球室から球を打つ音が聞こえてきたのです。 そのせいで、皆、夜の見回りには誰も行きたがらなくなってしまいました。

父は怖いもの知らずなので、よく見回りを買ってでたそうですが、確かに卓球室には誰も見当たりません。でも、廊下にでると「パコーン、パコーン」という球を打つ音がかすかに響いていたそうです。 父いわく「まだ10代であんなことになって、本人もいたたまれなかったんだろうさ。好きなだけ遊ばせてやれ」とのこと。

やがて、結婚して私が生まれ、建築関係の仕事を始めた父ですが、不思議な体験はまだまだ続きます。 ある学校の改築の仕事を引き受けた父ですが、部下たちが口々に「あそこの現場は幽霊が出るから行きたくない」と愚痴り始めました。

最初は笑い飛ばしていた父ですが、あまり皆が血相を変えて、真剣な顔で訴えるので「大の大人がそこまで怯えるというのは、きっと何かあるんだろう」と自分もそこの学校に行ってみることにしました。それは皆、ぼんやり人の形をした影のようなもので、ぐったりと座り込んでいるような人や、さーっと駆け出していく人、ぼんやりと突っ立っている人、様々な幽霊がいたとのこと。話しかけても、こちらには全く無関心なのか、聞こえてないのか、幽霊たちは思い思いに昼下がりを過ごしていたそうです。 別にこれといって悪さもしてこないので、父は見ないふり、気づかぬふりをして黙々を仕事を進めていきました。

やがて、従業員も慣れっこになったらしく、壁のシミか風景程度にしか感じなくなったそうです。 やがてその学校は解体されてあとかたも無くなりましたが、父が解体前に職員に聞いたところによると、実は、もともと学校が建てられる前は、墓地だったとのこと。

「せっかく静かに眠ってるのに、子供らに騒がしくされて、たたき起こされたら世話はねえや。まあ、そのほうが案外、寂しくなくてよかったのかもしれないがな」とは、父の言葉です。

やがてそれから10数年が経ちました。度胸ではだれにも負けない父ですが、実は若い頃から体が弱く、何度も大病を患っては、入退院を繰り返してきました。 しかし、もともとの生命力が強いのか、何度も三途の川を渡りかけても、きちんと戻ってくるのです。

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コメント(1)
  • 蝦夷っ子だね!

    2022/10/17/18:58

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