消えた案山子
投稿者:ぴ (414)
おばあちゃんの家がど田舎にあり、私は夏休みになるとよくおばあちゃんの家に泊まっていました。
夏休みはほぼ丸々お泊りしているときもあったし、自給自足するようなそこでの生活が珍しく、すごく気に入っていたのです。
その祖母の家の隣には、誰もいない空き家がありました。
ひっそりとしたその空き家は人がいなかったので、私はたまにそこを遊び場にしていたのです。
今思ったら怖いのですが、そこには無数の案山子が置いてありました。
農業をする案山子や子供と手をつないでいる案山子、座って話をしているような案山子などさまざまです。
私はそれを見るのが好きで、よくそこに行っていました。
けれどその案山子が急に消えてしまった日があったのです。
私はそれがとても気になって、祖母に「隣の案山子が消えたよ」と訴えました。
それまでたくさんあった案山子が一夜にして突然無くなったのが不思議でしょうがなかったです。
祖母は不思議そうに「案山子?」って聞いてきました。
私が隣の家の空き家にある案山子の話をしたら、祖母は「そんなもの置いてなかったわよ」と笑うのです。
勘違いだろうと言われてしまいました。
しかし、その日近所の人が訪ねてきて、隣の家の人が亡くなったらしいよという話をしていきました。
なんでも隣の空き家の持ち主はもう年で、ボケて娘さん夫婦が引き取ったらしいのです。
それが病気でころっと亡くなったと、祖母たちは悲しんでいました。
昔案山子を作るのが趣味で、祖母たちにも分けてくれたらしいです。私はその話を聞いて、なんとなく案山子が消えてしまったわけが分かったのでした。
きっと消えた案山子はその家の持ち主であるおじいさんの帰りをみんなで待っていたんだと思います。
そしておじいさんが天国に召されたと分かって、一緒についていったのではないでしょうか。
あまりに現実離れした出来事ですが、私はその想像したエピソードを怖いとは感じず、なんだか素敵だなと思いました。
あの案山子はもしかしたら子供(私)を喜ばせるために、私だけに見えた案山子なのかもしれません。
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