悶(もだえ)
投稿者:四川獅門 (33)
体験者 藤木 孝広 (仮名)
2017年12月 S県某所
藤木さんは田舎から上京し数年間都内のIT企業で働いていた。
度重なるパワハラとサービス残業に心折れた彼は、地元の中小企業へ転職した。
実家に頼る事を憚った藤木さんは、家賃2万円弱の古いアパートに引っ越した。どんなにボロいアパートでも、彼にとっては都会より居心地が良かった。
引っ越して1ヶ月程経ったある日、藤木さんの元に小学校の同窓会への誘いが届いた。
会場がアパートから近いのと、独り身の寂しさから参加を即決した。
同窓会当日、アパートから徒歩15分程の場所にある居酒屋へ向かう。懐かしい街並み。みんなどうしているだろう。
期待と、一抹の不安。童心に帰ったような気分だった。
藤木さんが会場に着いた頃には、参加者全員が揃っていた。みんな一斉に彼を見た。
懐かしい顔ぶれ、本当に20年前の同級生達がそこにいる。
皆、自分との再会を喜んでくれた。
仲良くしていたスポーツ少年の久保くんがビール腹になっていたのを笑ったり、地味だった女の子がモデルのように美人になっていたり、まるで夢を見ているようだった。
次々に酒や料理が配膳される中、奇妙な事が起こっていた。
誰も手を付けないオレンジジュースやコーラが、長テーブルの上に増えていく。
「このコーラ誰の?」
「オレンジジュース来たよー」
5杯、6杯、誰も手を付けないジュースのグラスがテーブルの一角を占領していた。
それを見た久保くんが、こんな事を言った。
「アイツも来てんのかな」
全員ピンと来たようだった。六年生の時に亡くなった上野君の事だ。藤木さんは特に、上野君と仲良くしていた。親友だった。
各々が上野君との思い出を語り出す。
やんちゃで、明るくて、みんなの中心だった。先生にも好かれる子だった。
ある日突然、上野君は3階の教室の窓から飛び降り帰らぬ人となった。
理由は誰にも分からなかった。
そんな話になっても、誰1人怖がったり気味悪がったりしなかった。
藤木さん1人を除いて。
藤木さんは嫌な汗をかいていた。
良い締め方ですね、素敵です
オチが怖すぎる
素晴らしい。全体の雰囲気も、締めの一言も……
怖い!
雰囲気がなかなか良いですね
小学生の恋心を言いふらした者に待ち受けた報いが死というのは少々重すぎたかもしれませんね