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妖怪・風習・伝奇

こんにちはさんによる妖怪・風習・伝奇にまつわる怖い話の投稿です

手招きする黒い老婆
長編 2022/08/22 20:02 8,069view
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私の住んでいた地元には、貧しい暮らしのため老人を捨てる姥捨て山がありました。
もちろん、時代が進んだ現代ではそんな恐ろしい風習はありませんが、小学生の頃に祖母から初めて昔話として聞いた時は
子供ながらに恐ろしくてたまりませんでした。

ある日、私は数人の友達と一緒に近くの山のふもとで遊んでいました。
天気も良く、気持ちいい風が吹く中で私と友達は時間が経つものも忘れて遊びに夢中になり、
気が付けば辺りは真っ暗になっていました。

「あれ?ここ…山の中じゃない?」と、一人の子が言いました。

当たりを見渡すと、その子が言った通り私たちは山の中にいつの間にか来てしまっていました。
山には子供だけで入ってはいけないと大人たちから口すっぱく言われていたのに…。

友達の一人が「もう帰ろう。お母さんに怒られちゃう」と言うので、私たちは山を下りて

家に返ろうとしました。

ですが、辺りを見渡すと見覚えのない風景ばかりで、帰り道が分かりませんでした。
私を含めた数人が怖くて泣き出す中、ふと、私は唐突に祖母の昔話を思い出しました。
どうしてこんな時に思い出してしまうのか…姥捨て山の話を思い出した私は余計に怖くなり、
早く帰りたいと強く思いました。

そんな時、1人の女の子が「あそこに誰かいる!」と指さしました。
私たちが一斉にその子が指をさす方向を向くと、そこには一人の黒い影が手招きしていました。
薄暗い山の中、何とかそれが人影だと分かりました。

その影を見た瞬間、私は言い表せないほどゾッとする恐怖を感じました。
あっちに行ってはいけない…直感的にそう思いました。

私は慌ててみんなに「早く逃げよう!」と叫び、反対方向に走りました。
他の子たちは驚きつつ、私の後を追ってきました。
「どうして逃げるの?あの人に助けてもらおうよ!」と叫ぶ友達に、私は「駄目!あっちに行ったら悪いことが起きる!」と
叫び返して走りました。

息が切れるまで走った頃、一度立ち止まって後ろを振り返りました。
黒い影は見えなくなっていたので、友達とあの影について話すと、指を指した子を含めたほとんどの子は
あの影に対して何も思わなかったようですが、1人だけ私と同じく不気味に感じた子がいました。

「たぶん、あの影はおばあさんだったと思う…」そう呟いた子は、顔を真っ青にして震えていました。

私は影がどんな人だったかは分かりませんでしたが、その子がおばあさんと言ったことで
姥捨て山に捨てられて亡くなった老人の一人じゃないかと思い、恐怖で固まりました。

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