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不思議体験

たかしさんによる不思議体験にまつわる怖い話の投稿です

祖父の死後
長編 2022/08/12 23:22 2,810view

 だいたい10年前の話、当時の記憶を思い出しながら書いている。
 気になるところなど、質問してくれれば思い出せると思う。

 あれは大学4年生の夏休み。俺はPS3の競走馬育成ゲームを始めたばかりで、やり込む毎日を送っていた。
 その時育成していた馬は死ぬことが多く、葬式の画面がよく出ていた。よく死ぬなーなんて思っていたが、あの頻度は異常だったと、その後のやり込みで判明する。虫の知らせだったのかな、と今では思っている。
 そんな夏休みを送っていた俺に、癌で闘病していた祖父が亡くなった、と親父から連絡が来た。

 祖父との関係をここで書いておきたい。
 俺はおじいちゃん子で、小さい頃は家も近く、毎週のように遊びに行っていた。オムツを持って自分で歩いてきていたくらいだよ、なんて話を大きくなってからよく聞かされていた。
 自分で言うのもあれだが、初孫と言うこともあり、本当に祖父母にはよく可愛がってもらった。だが、俺は小学校低学年のころに家族でT県に引っ越し、それから祖父母とは少し疎遠になっていた。俺は大学入学を機に祖父母のいるA県で一人暮らしを始め、祖父母とは時々会って近況報告するような日々だった。親戚の中で俺が1番頻繁に祖父母に会っていたと思う。
 祖母は多くの病気をしたが、手術を経て乗り越えてきた人だった。だが俺が大学2年生くらいのときに脳血管疾患で倒れ、そこから要介護となっていた、祖父はそんな祖母のことを献身的に支え、介護していた。親戚の誰もが祖母より祖父が先に逝くなんて想像していなかった。それほど癌の発見から亡くなるまで、あっという間だった。

 祖父の訃報を聞いた俺は悲しかったが、可愛がってもらった祖父のために何ができるかを考え、通夜葬式などで手伝えることがあればなんでもすること、きちんと感謝の気持ちを祖父に伝え、見送ること、という2点を掲げ行動しようと決めた。

 祖父母には子どもが2人いて、長男がA県在住で俺のおじさん、仮にひさしおじさんとする。次男が俺の父親でせいじ、俺の名前はたかしだ。
 
 親父から祖父の訃報を聞いた時に時を戻そう。

 親父「たかし、じーさんが死んだ。明日が通夜、明後日が葬式になる。俺たちがそっちに着くまで、ひさしおじさんを手伝ってあげてくれ。」

 俺「そうか、亡くなったか。わかったよ。」

 というやりとりをした。
 俺は翌日、通夜の会場で、ひさしおじさんに、通夜葬式で手伝えることがあれば、なんでもやるから言って欲しい。と伝えた。おじさんは少しびっくりしていたが、俺に役割が与えられることはなかった。
 しばらくして親父たちが会場に到着し、通夜は滞りなく終わった。
 長年付き合いのあるお坊さんの、

「なーむあーみだーぶつ、なーむあーみだーぶつ」

 という読経が印象に残っている。
 その日の晩、通夜会場でおじさん一家と俺の家族で、祖父の見守りをした。死者が眠る隣の部屋で、蝋燭の火を絶やさずに起きている、というもの。ごくありふれた仏教徒なので、日本の大体の人は同じことをしているのではないかな。久しぶりに会ったいとこたちと話が盛り上がり、ほとんど寝なかったが、順番でシャワーを浴びようという話になった。だが、会場にはシャワー室がひとつしかない。ここにいるのはおじさん一家と俺の家族、合わせて11人。全然シャワーが足りない。俺はいい案を思いつき、おじさんに提案した。

俺「じーさんの家、ここから歩いて10分もかからないよね。じーさんの家でシャワーを借りる人と、ここでシャワーを浴びる人に分かれよう。」

おじ「うーん、いいけど。はい、これ鍵。」

 おじさんも賛成してくれて、じーさんの家の鍵を貸してくれた。俺は1番じーさんの家に通って様子を見てきたし、自分の家かのような感覚があり、なんの違和感も持たずに発言していた。

俺「俺は一刻も早く汗を流したい。うちの家族はじーさんの家でシャワーを浴びることにしよう。一緒に行こ。」

たかし母「わかった。準備したら行くから先に行ってて」

 というやりとりをして、俺は1人じーさん家に向かった。故人の家に上がり風呂を借りるというのはどうかと一瞬思ったが、慣れ親しんだところであり、怖さは一切感じなかった。シャワーを浴びながら家族を待ったが結局誰も来ず、1人で黙々と体を洗った。頭を洗っても怖くなかった。

 何事もなくシャワーを終えた俺は家族の待つ会場に戻り、なんで来てくれなかったの?と聞くと、準備はしたがやっぱりやめたとの事だった。それならそうと伝えてくれよ、と思った。
 翌日の葬式も昨日のお坊さんが来てくれて、読経してくれた。法事の時にしか聞かない読経と、故人の両脇に置いてある提灯の、回転する灯り、集まってくれた方のすすり泣きが相まって独特の重苦しい雰囲気を醸し出していた。
 お骨を拾う儀式も無事終わり、一連の葬式などに関する儀式は全て終わった。じーさんにはきちんとありがとうの気持ちを持って送る事ができた。あとは帰って休むだけだった。だが、事件はその日の夜に起きた。

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