星空に惹かれて
投稿者:ぴ (414)
私は夜の星空が大好きで、田舎の親戚の家に行くと夜に必ず庭で星を見上げました。
親戚の子たちはみんな田舎に住んでいるので、見慣れた夜空です。
星なんて珍しくもなんともないですが、私にしたらとても壮大なすごい景色に見えました。だからいつも親戚の子に付き合ってもらっていました。
そんなこんなでその日も親戚の同い年くらいの子と家の前で夜空を眺めていたのです。
しかし、その日はいつもと少し違いました。
ふっと気が付いたら私のすぐ横に一人のおじいさんが立っていたのです。
私も親戚の子もびっくりしました。
しかし、おじいさんは何事もないかのように、「今日は寒いねぇ」と声をかけてきたのです。
私は近所のおじいさんが私と同じように綺麗な星を見に来たのかと思いました。
だからしばらくああだこーだと他愛のない世間話をしていたのですが、隣の親せきがあまりにしゃべらないのは不思議でした。
私よりも交流がありそうなのに、なぜしゃべられないんだろうと顔を見たら、その子は硬直しているように見えました。
しばらく話したらおじいさんは静かに歩いて自分の家に帰っていくようでした。
私はそのおじいさんが見えなくなるのを確認し、隣の親戚に「あの人誰なの?」と聞いたのです。
親戚は硬直した顔のままこっちを向きました。
そして「田所さん」とぼそっとした声で言いました。
どうやら知り合いだったみたいです。
私は一安心して、「大分お年寄りだよね?こんな寒い日に体大丈夫かな?」と心配しました。
そしたら親戚の子が「3日前に亡くなった」と言ったのです。
すぐに理解できずに聞き間違いと思って聞き返してみたら、さきほど話していた田所さんは3日前に老衰で亡くなったといいました。
話が嚙み合って、意味が通じるまでに数分かかりました。
私があの日初めてしゃべったおじいさんはもう亡くなった人だったみたいです。
聞いた瞬間はぞっとしましたが、今はおじいさんもあまりに綺麗な星空を最後に見たかったんだろうなと思います。
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