マンション5階の角部屋
投稿者:dia (6)
高校生の時、母とマンションの5階の角部屋に住んでいた。
母は仕事が忙しかったので、私は一人で毎日過ごすことが多く、
自分の部屋で黙々と漫画を読んだり、勉強したりしていた。
そんなある日の夜。
寝苦しく、寝返りを打つたびパイプベッドが軋み、
その音で熟睡できずイライラしていた。
テスト前で勉強しないとと焦っていた事、
成績が上がらず、悩んでいた事、
どうしようもないことで落ち込んだりしていた事、
そんなことを考えながらうとうとしていたら、
金縛りのような感覚に陥っていた。
キーーーンと痛いほどの耳鳴りと、ずっしりとした体の重み。
心臓の鼓動がドクッドクッと大きく響き、非常に居心地が悪かった。
でも、そんな状況とは裏腹に意識が遠のいていくのがわかった。
○○だよね?○○だよね?
それは母の声だった。○○の部分は全く聞き取れない。
母が私に一体なにを聞いているのだろう…?
と、ぼんやり思っていた、その時。
「わかってるんだよ」
と、全く知らない男の低い声が私の耳元で囁かれた。
夢とは到底思えない、はっきりとした口調だった。
面識のない男の声に恐怖で震え上がり、目を開けることができなかった。
その恐怖と闘っているうちに、気づいたら朝になっていた。
侵入者がいないか部屋の中を確認したが、いつも通りの私の部屋。
きっと悪い夢だったんだ、と自分に言い聞かせた。
その数日後、たまたま連休で実家に来ていた兄が、
私が学校から帰宅後、不思議な顔をしながらこんなことを言い出した。
「え、さっき、帰ってきたよね?」
私は、今帰ったところだよ?と言うと、兄はこう続けた。
「白いコート着てたよね?玄関からそのまま自分の部屋に入っていったの、俺見たよ」と。
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