人間観察が趣味の友達
投稿者:犬型ロボット (15)
友達に、ちょっと変わった趣味を持つ子がいました。
その子の趣味とは、街中でぼんやりと立って、道行く人を観察するというもの。
初めて聞いた時は「見られている人は良い気しないからやめた方がいい」と止めたんです。
でも友達は「ずっと見つめている訳じゃないし、不審者にならないように気を付けてるから大丈夫だよ」と言って聞いてくれません。
私は内心、いつか事件に巻き込まれるんじゃないかと心配していたのですが、その心配が現実のものとなってしまったのです。
ある日の夜、友達から電話がかかってきました。
通話に出ると、とても怯えた様子で、しきりに「見てはいけないものを見てしまった。すぐ目を逸らせばよかった。そしたらこんなことにならなかったのに…」と繰り返していました。
「どうしたの?何があったの?」と聞いても、要領を得ません。
そのうち、ぷつっと通話が切れてしまったのです。
それから2週間後、共通の友達から、「あの子(変わった趣味を持つ友達のこと)と最近会った?今日、○○駅で見かけたから声かけたんだけど、ぼんやりとしてこっちを見ないし何か変だったの」と電話がありました。
共通の友達が言うには、変わった趣味を持つ友達に何度声をかけても返事を返さず、ずっと往来を眺めているだけだったそうです。
しかも、何日も家に帰っていないような、あまり清潔ではない見た目をしていたのだとか。
私は「電話でおかしなことを言ってたのは覚えてるけど…どうしたんだろうね?」としか言えませんでした。
そんなことがあって1ヶ月後、変わった趣味を持つ友達から久しぶりに電話がありました。
また変なことを言うのかと身構えていたのですが、言動は普通でした。
何が起きていたのか聞くと、深くため息をついた後、「いつもみたいに人間観察していたら、背中にたくさんの女の人を背負った男の人を見かけて…。じっと見てたら背中の女の人達と目が合って、そこから記憶がないの」と話してくれました。
気づいたら実家に居て、親御さんから「ボロボロの恰好で町を彷徨っていたところを警察に保護された」と聞いたそうです。
その子が見たのはきっと、幽霊とか怨霊といった類のものでしょう。
取り憑かれて意識を失っていたのだと思います。
友達はすっかり人間観察の趣味をやめ、極力外出しなくなりました。
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。