映りこむ何か
投稿者:ぴ (414)
最初はただの見間違えかと思いました。疲れていて変な幻覚でも見たのかと思って、気にしていなかったのです。
しかし、それはだんだんと無視できないくらい頻繁に起こるようになりました。
前の職場がブラック企業といっても過言ではないところで、ろくに睡眠時間も取れないような劣悪な環境でした。
だから次の職場では新しく仕切りなおして頑張ろうと気合を入れて行きました。
次こそはいい職場であってほしいと強く望んでいたのです。
しかし、その職場に転職して良かったと感じたのは最初だけでした。
確かに福利厚生はしっかりしているし、仕事の量にも問題はありません。しっかり週休二日制だし、ブラック企業ではないどころかとてもいい職場環境で間違いないと思いました。
でもその代わりにものすごく雰囲気が悪く、息詰まることが多い職場でした。
トラブルの原因は人間関係です。
不思議なことに問題がある職員が多かったわけではありません。
何なら前の職場のほうが意地悪い人はたくさんいたし、人間関係に悩むことは多かったです。
この職場は働いている人に問題があるわけではないのに、なぜか職場の雰囲気がギスギスして、仲が悪かったです。
人がいなくなると入れ替わり立ち代わりでその人の悪口を言い合い、常に悪口が蔓延っていました。
どんよりした暗い雰囲気で、そのせいか職場の人の入れ替わりが早いと聞きました。
なんでこんな雰囲気なんだろうとずっと不思議でしょうがなかったです。
あからさまにきつい人がいるわけでもなかったし、一人浮いている人がいるわけでもないのです。
なのに、どうしてか職員同士の仲が悪くて、みんないつもピリついています。
このままではまた同じように転職する羽目になるのでは…と私はすごく不安になりました。
その職場には職員が休憩するための仮眠室みたいな部屋があって、私は家が遠かったのでお昼はいつもそこで食事を取っていました。
みんな職場から近い場所に家があり、会社にいるのが相当嫌みたいで、お昼になると必ず家に帰っていました。
だからその部屋はいつも一人っきりです。でも私はそれが楽でいいなと思っていました。
一つだけ気になることといけば、仮眠室に置いてある鏡です。そ
れがいつから置いてあるのかと不思議になるくらい古びていました。
仕事が始まる前にいつもそこでメイクのよれや髪をチェックしていくのですが、もっと新しいものに変えてくれないかとずっと思っていたのです。
そんなある日、いつものように仮眠室で食事をして鏡で顔をチェックしていたら、ほんの一瞬髪の長い女が髪の毛を梳いている姿がさっと鏡の奥に映ったのです。
「え…」と思ったけど、一瞬の瞬きの間に見えなくなって、私は気のせいかと首を傾げました。
部屋には私ひとりなのです。なのにそんな人が映るはずもないと、私は自分が疲れていると思って仮眠室を出ました。
ブラック企業で働いていたときに、幻覚を見ることがあったので、きっとそれだと思い込んだのでした。
ただそれは一回きりではなかったのです。
また別の日に私が一人で仮眠室で休んでいると、「カタリ」と何か小さなものが落ちるような音がしました。
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