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ヒトコワ

りうさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

登山
短編 2022/05/01 21:27 3,011view
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高校時代、登山部でした。その日も4人一組でパーティを組んで頂上まで約3時間の道のりを登っていました。

競技登山ですから、一般用の登山道とは違い、時には道なき道のコースです。背中には約10キロの重さのザック(登山用バッグ)を背負って。約2時間登った頃、上から女性が一人で歩いて来ました。登山競技コースを軽装で。白と黒のチェックのワンピースでヒールのないパンプス。手ぶらです。間違いなく、一般登山道から間違えて来てしまったのだなと思いました。いつものように、すれ違う人には挨拶として「こんにちわぁ」と大きな声で言ったところ、その人は「ごきげんよう」と静かな声で返してくれました。真夏でしたが汗ひとつかいておらず、物凄い厚化粧で、速歩きでした。仲間とは一瞬、顔を見合わせた程度で、特にその人について話をすることなく競技に集中し、登頂しました。その後はテントを張ったり天気図を描いたりと競技を続け、やっと食事の時間になって、あの時の女性の話になりました。

登りの時、私は終始先頭だったのですが、最後方にいた仲間がポツリと言いました。

「あの人、私達とすれ違った後、私達のことを見ながら後ろ向きで下って行ったんだよね…」

みんな寒気がして、その夜は、いつもみたいに遅くまでお喋りせず、大人しく寝ました。

翌日、下山が始まり、私は最後方で下っていました。約2時間が過ぎた頃、あの女性が現れました。昨日と同じ格好で登って来たのです。細い登山道ですから逃げることもできず、平静を装いながら、でも挨拶することは出来ず。すると、すれ違う際、その女性は

「こんにちわぁ!わ?、おい!!、あぁぁ〜!?」

と大声で叫びました。私達は「キャー」と叫びながら走って下山しました。最後方にいた私は、本当は後ろを振り向いて女性がどうしているのか見てみたかったのですが、恐怖が勝って見ることはできませんでした。ですが、後方から微かに「キャッキャッキャキャッキャ」という笑い声が聞こえたような気がしました。

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関連タグ: #声#夏#山#登山
コメント(2)
  • 白黒チェックワンピースより、アーバンデジカモの方がいいですね。

    2022/05/02/11:12
  • ↑どちらでも どうでもいいことですね

    2022/05/02/15:29

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