双子の姉の秘密
投稿者:足が太い (69)
友人のA子とは幼稚園の頃からの付き合いで、かれこれ30年以上は仲良くしています。
A子はとても落ち着いていた性格の子で、滅多に感情が荒ぶることがありません。
A子を知る人からは、「優等生」「真面目な子」といった印象を持たれています。
そんなA子が怒るのは、双子の姉であるB子を馬鹿にされた時だけ。
A子はB子のことを自分以上に大事にしていて、ちょっとでもB子について悪意ある発言をすると、顔を憤怒で真っ赤にしながら怒りだすのです。
私はA子のことを大切な親友だと思っているのですが、本人にも言えない気持ちを隠しています。
それは、A子の双子の姉であるB子について。
実は、幼稚園の頃からA子のことを知っている私でも、B子の姿を見たことがないのです。
B子を見かけたことがないのは私だけではなく、A子母と仲が良い私母もですし、同じ学校に通っていたクラスメイトや、他の共通の友人たちもそう。
誰もB子の姿を見たことがなく、また、A子両親もB子についてはいるともいないとも明言しない為、私含めて皆は「B子は存在しないのではないか」と、思っていました。
でも、「B子なんて本当はいない」「B子はA子の作った妄想の存在」なんてことをA子に言えば、A子は怒り狂います。
だから誰も、B子についてわざわざ追及することはありませんでした。
B子については触れることなくA子と友人付き合いを続けていたのですが、ある時、A子から思いがけない連絡がありました。
なんと、A子とB子が合同結婚式をするので、出席してほしいと言うのです。
電話して詳しく聞いてみると、「私達って双子でしょ?どうせ結婚式をするなら、まとめて一緒にした方がいいかと思ったの」と。
共通の友人・知人は「とうとうB子の姿を見ることが出来る」とワクワクした様子でしたが、私は何故か胸騒ぎが止まりませんでした。
そしてA子とB子の合同結婚式当日、遅れて会場に入ったのですが、会場内は何だか異様な雰囲気が漂っています。
用意された席に座り、前の方を見ると、ウェディングドレスを来たA子とA子新郎の隣に、ウェディングドレスを着せられた人形と、新郎らしき恰好をした人形が置かれていました。
同じテーブルだった友人C子に「あのウェディングドレス着た人形って…もしかしてB子なのかな?」と問うと、C子は「そうかもしれない…。でも、さっきからA子もその新郎も、A子両親も、あの人形2体をまるで本当の人間みたいに扱ってるのよね」と、教えてくれました。
モヤモヤしているうちに式は始まり、司会によってどんどん進んでいきます。
式場スタッフの方はB子とその新郎らしき人形を、A子達と同様に人のように扱っていて、不可思議な光景です。
新婦から両親に向けての手紙を読む場面では、A子がB子の手紙を、声色を変えて読んでいました。
つつがなくと言っていいのか、A子とB子の合同結婚式は終わり、2次会へ行くことになりました。
式場を出て2次会会場に向かうタクシーの中では、「B子、人形だったね」「どういうことなんだろうね」と皆、不思議がっています。
そして2次会の会場についてみると、そこにはやっぱりB子らしき人形と、B子の新郎らしき人形が座席に並べて座らされていたのです。
その異様な景色の中でもA子とA子新郎は気にした様子がなく、2次会に来た友人・知人にお酌をしたり、楽しそうに話しかけたりしていました。
私はその頃になると「もうB子とその新郎らしい人形については気にしないでおこう」と思ってお酒を飲んだり、他の友人と話していたのですが、お酒に酔った参加者のとある男性が、いきなりB子らしき人形をわしづかみにして「これがB子ぉ?ふざけてるだろ!」と笑い出しました。
A子はすぐに男性に駆け寄り、「やめて!B子が嫌がってるじゃない!」と言って、男性の手からB子らしき人形を奪い取りました。
男性は悪酔いしているのか更に高笑いして、「B子なんていなかったじゃないか!嘘つきめ!何が合同結婚式だ、気持ち悪い!」と、言い放ったのです。
その瞬間、2次会会場内にバチン!バチン!バチン!と大きなラップ音が響き渡り、急に照明が消えました。
痛みいります。