くだんの狂気
投稿者:コオリノ (3)
これは、俺がまだ実家で酪農を営んでいた爺ちゃんと暮らしていた時の話だ。
早くに父親を亡くした俺は、母親と妹、そして爺ちゃんと婆ちゃんの五人で暮らしていた。
本来なら生きていた親父が継ぐはずだった酪農業を、将来は俺が継ぐんだと、その当時の俺は爺ちゃんの手伝いに勤しんでいた。
そんなある日の事、いつもの様に牧草を納屋から運び出し牛舎に向かっていると、突如爺ちゃんの叫び声が聞こえてきた。
俺が荷車をほっぽり出し叫び声が聞こえた牛舎に駆けつけると、Tシャツ姿の爺ちゃんが、床に尻もちを着いた状態で、わなわなと体を震わせながら座り込んでいた。
直ぐに駆け寄り爺ちゃんを抱きささえると、
「くっ、来るな!お前はあっちいっとれ!!」
額に血管を浮かせ怒鳴り散らす爺ちゃん、ただ事では無いと直ぐに察した俺は、辺りを急いで見回した。
すると、
──びちゃびちゃ
歪な水音。
液体が蠢く音が、牛舎の一角から響く。
釣られて目を向けると、俺は思わず言葉を失った。
「み、見るな見ちゃなんね!!」
耳元で叫ぶ爺ちゃん、だがそれすらも俺の耳にはほとんど届かない。
体が硬直し、まるで氷の中に閉じ込められたような寒さに襲われた。
目の前にあったそれは……とても言葉では形容し難いものだった。
牛の股からボタボタと垂れる血の混じった体液。
それに繋がるようにして地面に蠢く何か。
白く牛の体にも見える、だが頭がない。
いや、ないのではなく、溶けかかっているのだ。
しかもそれは牛の頭とも言えず、どこか人の顔を思わせるように形どっている。
体液まみれのそれは、ぐちゃぐちゃと歪な音を立て蠢き、やがて顔の部分、口のようなものを僅かに開いた。
「に、逃げ……来る……グルぞ、ヒヒ……ここにグル……ゾ……ひ、ひぬぞ、ひぬぞ……びんな、びんなジヌゾ!ダカイ、やばの、だかいどこ、逃げな……ぎゃ、ヒヒっ……!」
そいつはおぞましい言葉を発すると、体をくねらせ、異様な白煙を身体中から発し始めた。
まるで蒸気のような煙。
呆気に取られる俺と爺ちゃんの目の前で、そいつの体は徐々に溶け始め、やがて地面に吸い込まれるようにして消えていった。
地面には濡れた後があり、僅かな煙をじゅうじゅうと音を立てながら吐いている。
しばらく呆然としていると、正気を取り戻した爺ちゃんが、
むちゃくちゃ怖い。過去一の怖い話かもしれない・・・
件とにた妖怪で「禍(か)」と言うのが居るらしい
こっちは予言ではなく、土砂崩れ等災害が起こる地域で直前に現れるとか
面白かった!
たまに目撃されるって言うけどいつも災害の後に話題になりますよね
書くのうますぎ。読みやすくてすごく怖かったし面白かった
くだんは伝承の中でも真実味が高いと自分は思っています。
くだんって爺ちゃん達恨んでたん?