冬の海辺にて
投稿者:白死蝶 (2)
私は幼い頃から海とか川とか水辺がとてもとても好きな人間でした。川のせせらぎや波の音などを聞くと、心まで一緒に揺さぶられるようなそんな心地がして懐かしいような帰りたくなるようなそんな気持ちになるのです。
そんな私の趣味の一つが、ただ海を眺める事でした。車で海辺まで出かけ海の見える位置でコーヒーを飲みながらゆっくりと過ごす。それが何よりも幸せでかけがえのない時間でした。
数年前の冬の日、私はいつものように海を見ようと支度をしていました。コーヒー入りの保温性タンブラー、防水のBluetoothスピーカー、小説数冊、地面に座るためのレジャーシート、クッション用のバスタオル、ハンドタオル等。これだけあれば2〜3時間は過ごせる。そう意気込み、さて家を出ようとした時何故かふと頭をある考えが過りました。
今日はB海岸に行かない?
いつも行く海辺までは大体車で20分ほど。B海岸までは約40分と倍近い時間がかかります。それに海の見え方もいつもの海辺より悪い。にもかかわらず私の思考はもはやB海岸に行く。それだけに支配されていました。
車に荷物を乗せ、車を出すと何か急かさせるような急がなければいけないような不思議な感覚が私を襲いました。今日は午後から何かあっただろうか?見たいテレビでもあっただろうか?と何度も何度も自分に問いただしましたが分かりませんでした。
何とかその焦燥感に負けずに安全運転でB海岸にたどり着いた時、私はもうどうしようも無い程の恐怖心に心を支配されました。
海岸の端。立ち入り禁止のロープのその奥に何かが居る。見えた瞬間に車のエンジンをかけ直ぐに逃げれば良かったのではと皆さん思われるかもしれませんが、恐怖に満ちた人間にそんな選択肢はありません。
ただじっとそれがこちらを向かない事を祈りながら見つめる事しか出来なかったのです。
そのまま体感で数時間じっとしていると急に車の窓が激しく何度もコンコンと叩かれました。ふと窓を見ると立派な袈裟を着られたお坊さんがお一人で立っておられました。
窓を開けると私にこうおっしゃいました。
見てはいけない。じっと顔を伏せ、大人しくしていなさい。事が終わればまた私がここに来ます。他の誰が来ても窓やドアを開けてはいけません。
そう言われコクコクと頷いた後、私は静かに下を向き1時間程じっとしていました。遠くでお経らしきものが聞こえていたのを覚えています。そうして、お坊さんは戻って来られました。
その際のお坊さんのお話を簡単に言うと、海で自殺なさった方々の霊魂が成仏しきれずに地縛霊となった後お互いの霊魂をお互いに縛るような形で依存し合い、一種の呪(しゅ)になる事があるそうです。それらは様々な形で人々に悪影響を与え、時には命を奪うこともあるとの事。
私は恐怖に怯えていましたが、お坊さんは大丈夫ですよと言いながら私に気合(某テレビ番組でやるような五字切り)を入れて去っていかれました。
今思えば私は最初から狙われていたのかもしれません。B海岸に行かなければならないと思った事、運転中に急がなければと思ったこと。
あの時もし目を離していなければ、あのお坊さんがあのタイミングで現れていなければ。
私がどうなっていたかなんて想像したくもありません。
寺生まれってやはり凄いと思った。
なんか装備品がワクワクする感じて真似しようかと思ったけど止めた!
夜の海外イメージだったけど
昼間なのかな?
確かにゆっくり出来た