祖父母の家へ行った弟から聞いた話。
弟は祖父母の住む色彩のないコンクリートブロックのような灰色の団地がいつも不気味だった。
でもそんなだから小さい頃より上の階へ行ったことがないことにふと気付いた。大学の夏休み中で浮かれていた時、好奇心で団地の上階に上がってみた。まあ、団地なので、どの階も判で押したように構造は変わらない。やがて最上階についたら、共用廊下突き当たりに浅黒く退色した緑色の金網の扉がポツンとある。ところどころ錆びている。頑丈な作りだが網の目から屋上を確認できたらしい。
何より気になっていたのは網目の向こう側に、杖をついた老人がいたこと。そこは安全柵もない広々とした屋上で、弟はあぶないなと思った。すみませんと声をかけてみても反応がない。屋上に出ようと扉を押すと南京錠が閉まっていてあれ?この人どうやって入ったの?と、不思議に思った。2、3度老人に声をかけたが、びったりと時間が止まったかのように反応がない。弟は気味が悪くなって逃げるように引き返した。
後になって団欒の時間に祖母の前で、不思議な出来事として伝えると祖母は昔を思い出すように語りだした。
『昔この団地の屋上から自殺目的で飛ぶ人がたくさん続いて困っていたけれども、組合で南京錠と高い柵を設置してからは誰も入らない場所…』
弟は、今でも祖父母の団地に行くと、帰り際私たち家族の足をわざわざ止めて、じっと、高い安全柵を見上げては
『いる……?』
と確認するように呟いています。






















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