豚の娘は豚だ
投稿者:chika (8)
短編
2022/03/20
18:58
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私は美人で優しい母が大好きでした。一人娘なので自分でも過保護に育てられたと思います。料理上手な母は私のために毎日手作りの甘いお菓子を出してくれました。
「いっぱい食べてね、おかわりたくさんあるから」
「うんっ!ママのお菓子だーいすき!」
子どもの頃はそれでよかったのですが……母の手作りお菓子がおいしすぎたせいでしょうか、私はぶくぶく太りました。小学校に上がる頃には立派な肥満児であだ名は力士でした。
ですが優しくて美人で大好きな母に文句を言えません、母は私の笑顔を見たくてやっているのですから責められるはずありません。もし料理やお菓子を残そうものなら「どうしたの?体調悪い?病院にいきましょうか」と大袈裟に心配してきます。
お母さんにお菓子はもういいよって言わなきゃ……。
そう悩みながらも実行できないまま、私は中学生になりました。ある時部屋を整理しているとアルバムを見付けました。中には子どもの頃の写真が貼られていました。
「なんで赤ちゃんの頃の写真がないんだろ、変だな」
不思議に思ってページをめくると、表面のセロハンに一部皺が寄っています。きちんと直そうと手をかけ、偶然滑り出た写真に固まりました。
写真の裏には異常に筆圧の強いボールペン字でびっしりと「豚の娘は豚だ」と書かれていたのです。
数年後……母はもともと子どもができない体で、私は父と愛人の間に産まれた娘だと知りました。
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