ある日を境に同僚男性Aが、奇妙な言動をするようになりました。
それまでのAはとても真面目で大人しく、上司から理不尽な扱いを受けても耐えて、決して逆らったりしません。
それなのに、急に上司に逆らうようになったのです。
まるで人が変わったかのようなAに、私を含め他の同僚達は「とうとう上司に耐えきれなくなったのか」「いつもパワハラを受けていたから、ストレスが爆発したんだ」と、噂していました。
一部の同僚は、Aの上司への態度に辟易していました。
でも、私としては、仕事はちゃんとやってくれているし、むしろ皆の嫌われ者だった上司が豹変したAの態度にあたふたしているのを見て胸がすっとするので、「もっとやれ！」とAを応援していました。
Aの性格が変わってから3ヶ月後、上司が無断欠勤したのです。
前々からパワハラとセクハラばかりする上司で、本当に嫌な人でしたし、皆心の中で「このまま辞めてくれたらいいのに…」と思っていました。
その願いが届いたのか、上司は無断欠勤を1週間続けた後、自主退職したのです。
前上司が辞めてから新しく入ってきた上司は可もなく不可もなく、だけど真面目な人なので、平和に仕事が出来ました。
Aも、新しい上司には逆らうことなく、大人しく従っていました。
しかし、そんな穏やかな日々は、ある1人の中途入社社員Bによって打ち破られました。
Bは40代くらいの男性で、入ってきた当初からすごく偉そうで、一気に皆のヘイトを集めました。
そしてあろうことか、事あるごとにAに絡み始めたのです。
Aはとても細くて背も成人男性の平均より小さいので、気弱そうに見えます。
だから自分の言いなりに出来るとでも思ったのか、BはAに対し、仕事を押し付けたり高圧的な態度を取るようになりました。
上司や、前上司への対応を知っている同僚はBをそれとなく諫めるのですが、Bは聞き入れようとしません。
そんなことがしばらく続いた頃、急にBが出勤しなくなったのです。
Bの無断欠勤が3日続いた頃、上司と他同僚Cの2人で、一人暮らしのBの家に様子を見に行きました。
元々Bの態度がすごく悪かったのもあり、私は「ただのサボりじゃないか」と思っていたのですが…。
Bの様子を見に行った上司とCによると、どうやら尋常ではないくらい怯えていたのだそうです。
Bは布団を頭までかぶり、ひたすら「Aが、Aが怖い、Aに消される」と、狂ったように呟いていたのだとか。
その異常な怯え方に、あり得ないとは思いながらも上司はAを別室に呼んで、面談を行いました。
面談は30分程で終わり、戻ってきたAは普段通りですが、上司は青い顔をしています。
好奇心旺盛な同僚が「どうしたんですか？何があったんですか？」と聞いても、上司は何も言わないのです。
一体何があったんだろう、と不思議に思っていましたが、上司は頑なに口を開こうとしないので、そのままうやむやになってしまいました。
結局Bもしばらくしてから自主退職していき、再び職場に平和が訪れました。
しかし、ひっそりとある噂が流れるようになったのです。
それは、「Aは自分に攻撃してくる人間を消す力がある」というもの。
前上司とBのどちらも、Aに対して攻撃的な態度を取っていましたし、どちらもその後会社から去っていったので、そういう噂が流れるのは仕方ないと思います。
でも、Aが消したのではなく2人とも自分から辞めていったので、「皆、面白がってあることないこと言って」と、殆どの人は噂に構いませんでした。
欧米か