あるホストの末路

俺はホストクラブで働いていたことがあります。
当時職場には二年先輩のAさんがおり、ルックスにこそ恵まれていたものの、同僚の客を平気で寝取ったり、女に大金を貢がせた上捨てたりと悪い噂が絶えない人物でした。

俺はAさんのヘルプに付くことが多かったのですが、ある時妙なことに気付きました。

「Aさん、酒こぼしました？」
「あ？何言ってんだ」
「だってほら、隣が濡れてますよ」

俺が指さすソファーに水たまりができ、雫がぴちゃんぴちゃんと滴っていました。
Aさん本人にも彼を指名したお客さんにもまるで心当たりがないそうで、皆困惑していました。

その後もAさんの隣の席には妙な現象が相次ぎ、どんなに注意していてもソファーが水浸しになる繰り返しです。

Aさんもさすがに気味悪くなったのか、三か月後に店を辞めてしまったのですが……
Aさんの退職後、同僚にこっそり聞かされました。

「実はな、Aを贔屓にしてたOLが半年前に自殺してんだ」
「えっ？」
「風呂で睡眠薬を飲んでそのまま……発見された時は全身びしょ濡れでふやけてたって」

Aさんの隣の席には、彼に捨てられた女性の亡霊が座っていたのでしょうか？
店を辞めた後のAさんの消息は不明ですが、霊の未練の強さを踏まえると、無事でいるとは到底思えないのでした。