お れ い
投稿者:繭 (42)
短編
2022/02/13
21:20
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都内の女子高に通っていた時の出来事です。
生来内気で人見知りな私はなかなか友達ができず、お昼休みには弁当を持って屋上に通じる踊り場に逃げていました。
その日も踊り場の階段に腰掛けて一人でお弁当を食べようとしたのですが、うっかり手が滑ってお箸を落としてしまいました。
「あーあ、やっちゃった」
プラスチックのお箸はカンカンといい音をたて階段を落ちていきます。
お弁当を横にどけて取りに行った時、ふと背後に気配を感じて振り向きました。
しかし踊り場には誰もおらず、気のせいかと安堵して戻り、弁当箱の中を覗き込んでぎょっとしました。
好物の卵焼きが一個なくなっているのです。
まだ手を付けてなかったのに……誰が盗み食いしたのか想像すると恐ろしくて震えてきます。
その後は踊り場を避け、女子トイレや校舎裏などでこっそりお弁当を食べていたのですが……
ある日の事、クラスのいじめっ子に踊り場に引っ張っていかれました。
「知ってるよ、毎日ぼっち飯なんでしょ?だっさ!」
私を見下し高笑いするいじめっ子とその取り巻きに何も言い返せず俯いていると、耳元で誰かが囁きました。
「お れ い」
次の瞬間、いじめっ子が階段から転げ落ちていました。
ただちに救急車が呼ばれ病院に運ばれたものの、彼女は全治二週間の重傷を負いました。
あの声は一体何だったのでしょうか?
お弁当の卵焼きを食べた幽霊が、お礼代わりにいじめっ子を突き飛ばしてくれたのでしょうか。
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